人生終盤でのミス 絶対に認めたくない元エリートたち
-池袋暴走事故 実刑判決-
東京・池袋で乗用車を暴走させて31歳の母と3歳の娘を死亡させ、9人にけがを負わせた旧通産省幹部、飯塚幸三被告(90)に先週、禁錮5年(求刑同7年)の実刑判決が言い渡された。
飯塚被告は裁判で、亡くなった母娘には「申し訳なく思う」としながらも事故は車の欠陥で起きたと主張してきた。自分は悪くない。悪いのは車、とされた遺族はどんな気持ちだったか。
同じようなことは3年前にもあった。東京・白金で早朝ゴルフのため女性を迎えに行った当時78歳の検察の元特捜部長が車を暴走させて店に突っ込み、通行人の男性をはねて死亡させた。この元特捜部長も「ブレーキがまったく利かない欠陥車が起こした事故だ」と主張。なぜか官界司法界の元幹部が事故を起こすと、原因は「車の欠陥」なのだ。
この元幹部たちは自分なりのやり方でここまで上り詰めてきた。そんな自分が人生の終わり近くでミスを犯したなんて絶対認めたくない。それが、こんなかたくなな態度を取らせているように私には思えてならない。
ちなみにこの元幹部たち、暴走死亡事故だったのに1度も逮捕されたことはない。
もちろん被告に無罪主張も控訴の権利もある。だが、むなしさばかりが残る裁判。池袋の事故で瞬時に最愛の妻と、かわいい盛りの女の子を失くした男性は「判決が出たら、もう争いはやめませんか。それより事故をどうしたらなくせるかという視点を、ともに持ちませんか」と呼びかけている。
人生の最終章での被告の5年間の刑期。その1日1日が1歩1歩、この男性の呼びかけに近づく日々であってほしい。いまはただ、そう願うばかりである。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年9月6日掲載)
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