若者に信頼できる情報を
-ワクチン接種への躊躇-
新型コロナ感染は先週、専門家が「災害時並み」と警告する事態となった。そんな時、ここ1年、折に触れて情報をくださる地元のS医師からメールが届いた。
一時、供給が危ぶまれたワクチンは必要量が届くようになったと記されたあと、やはりこんな心配が。
〈そのような状況になりながら、(若者が対象の)大学キャンパスでの接種はワクチンが余ってしまって、近隣の会社の方や家族にも接種できたと聞きました〉
大学ばかりではない。若い働き手の多い職種の接種に出向いた医師も「暇だった」と嘆いていたという。
S医師も指摘する若者のワクチン躊躇。ただ、これには私たちメディアにも責任があると思えてならない。SNS上に飛び交う情報。「金属片を埋め込まれて行動が監視される」「遺伝子が書き換えられる」。
ちょっと考えればデマとわかるはず、と切って捨てるのは簡単だ。だが、「不妊や流産の話はやはり心配」という女性の声は根強い。ワクチン接種が日本で始まって半年。そんなデータがそろうはずがないと強調してみせたところで、悲しいかな、メディアよりSNSが信じられてしまっている。
ただ、これはメディアだけのことではない。小出しの対策しかないこの国の政府。医師と学者で不協和音も聞こえてくる医学界。いずれにも若者の目や耳は向いていないのだ。
ここはどうだろう。メディア、政治、医学界が手を携えた発信基地は作れないものか。若者がいま求めているのは、何にも増して信頼できる確かな情報のはずだ。
若者は、ぜひワクチンを―。S医師のメールは静かな呼びかけで結ばれていた。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年8月16日掲載)
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