「見せる警備」で抑止するしかないのでは
-小田急線 無差別刺傷事件-
通信社から「どうしたら、このような事件は防げるのでしょうか」とコメントを求められて、考え込んでしまった。今月初め、夜の小田急線で刃物を持った男が次々乗客を襲い、女子大生ら10人が重軽傷を負った。車内に油をまいて放火も図った36歳の派遣社員の男は「勝ち組っぽい女性に腹が立った」と供述している。
大学中退後、定職もなく、生活保護を受けていたという犯人の男。格差社会を是正すべきといっても、すぐにできることではない。
ではラッシュ時、身動きもとれなくなる通勤通学電車の安全はどうしたらいいのか。
私は「JR東海などの新幹線を参考にしたら」と、提言させてもらった。
2015年、小田原付近を走行中の東海道新幹線車内で71歳の男がガソリンをかぶって自殺。巻き添えで女性1人が死亡した。また2018年には、新幹線車内で22歳の男が女性2人を刃物で襲い、止めに入った38歳の会社員が殺害された。
こうした事件で私は当時、「防犯カメラなどの機械警備では犯行そのものは止められない。全部の列車にガードマンを乗車させるべき」と、このフラッシュアップなどで提言させてもらった。
そのせいでもないだろうが、数年前から東海道新幹線では全列車に制服姿で特殊警棒、無線機を持ったガードマンが乗車。最近は発着時、乗降口で手荷物にも目を光らせ、幸いにしてその後、凶悪事件は起きていない。
もちろん通勤通学電車では簡単なことではないだろうが、せめて一部の電車やホームにガードマンを配置させることはできないか。
身勝手な理屈の無差別犯行は「見せる警備」で抑え込むしかないと思うのだ。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年8月23日掲載)
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