毅然とした姿勢 感じた静岡方式
-熱海 土石流災害-
死者18人、行方不明12人の大惨事となった熱海市伊豆山地区の土石流災害。発生から11日たっていたが、静岡朝日テレビの「とびっきり!しずおか」に出演、報道記者から家屋が猛烈な勢いで流されていく生々しい映像を入手したときの驚きや、その後の取材の苦闘ぶりを聞かせてもらった。
そんな中、経験したことのない大災害を前に、静岡県、熱海市、行政の毅然とした姿勢が心に残った。
発生から2日たった5日夜。行方不明者の公表をためらう県の担当者に、難波喬司副知事が必ず今日中に記者会見を開けと命じ、64人の不明者全員の氏名を新聞、テレビに発表。その結果、わずか1日で44人の無事が確認された。泥水に腰までつかって捜索する警察、自衛隊、消防が、それによってどれほど効率的に動けたか。静岡方式は今後、全国の自治体が参考にしてほしい。
その難波副知事は土石流となった盛り土について、業者が規定の15㍍の3倍も土を盛り、その土には冷蔵庫など産業廃棄物も含まれていたとして「明らかに不適切かつ違法」と断言した。
こうした業者への指導は県や市の業務。場合によっては官の責任も問われかねない。だが副知事は「失われた人命に対して、県は説明責任がある」として、私が出演した当日は、前日に記者から出されていた60の質問に答えて、記者会見は2時間半にも及んでいた。
コロナ禍の中で起きた土石流災害。いずれもあってはならないことだが、官の責任も官が厳しく追及していく。一方で官がなすべきことまで民に押しつけて、いらぬ軋轢を生む官のありようも問いかけた、今回の大惨事だった気がする。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年7月19日掲載)
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