これが「ふれあい」求める祭典の姿か
-五輪とホストタウン-
大阪の北部と南部、わが家とは随分離れているが、泉佐野市がホストタウンとしてウガンダの五輪ボクシング選手らを招いていると聞いてちょっと心が躍った。
ところが先月19日、成田に到着するなり、コーチのコロナ感染が判明。それなのに残る8人と出迎えの市職員4人は濃厚接触者と認定されないままバスで泉佐野市に直行。到着後、新たに1人の感染も明らかになって隔離状態が続いている。
政府の方針では空港での検疫は国が行うが、濃厚接触者の判別は受け入れ自治体の責任としている。一体、出迎えの市町村の職員にどうやって濃厚接触者を見分けろというのか。
政府は6月末、あわててマニュアルを作成。空港検疫で濃厚接触者を判別。そこから5時間以上かかる遠い自治体のためには隔離ホテルを用意。それ以外は防護服を着た運転手や職員とともに感染者をバスで市町村に直行させるとしている。果たして小さな町や村が、すぐに防護服着用の運転手やバスを手配できるのか。
ウガンダのボクシング選手は体重管理に気を使いながら、おいしい食事に大喜び。一方で「泉佐野をはじめ、大阪の人々に迷惑をかけた」と度々、おわびの言葉を口にしているという。
だが、こうした国のコロナ対策の遅れに、これまで受け入れを決めていた582のホストタウンのうち、102の自治体が中止を決定。受け入れる市町村の多くも、選手と市民は完全に引き離すとしている。これが競技の記録とともに、選手と開催国の国民とのふれあいを求めた平和の祭典のあるべき姿なのだろうか。
いまからでも遅くはない。立ち止まって、いま1度、考え直してみたい。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年7月5日掲載)
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