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2021年7月14日 (水)

全員不起訴「検事の本懐」は どこに

-河井元法相 買収事件- 

〈受領100人不起訴-「もらっておけばよかった」-正直者〉。これは公選法違反で3年の実刑判決を受けた河井克行元法相から買収資金を受け取った広島の県議や市議ら100人が全員不起訴となった先週、読売新聞の「USO放送」に載った読者からの投稿だ。

 2019年参院選候補の妻・案里元被告への投票取りまとめのため、県議や市議、町議にバラまかれた金は2900万円。国会議員秘書の300万円を筆頭に県議200万円、市長100万円など計100人。50万円受け取った地方議員も16人にのぼったが、東京地検は全員を不起訴とした。

 新聞記者時代から多くの公選法違反事件を取材してきた。その中で名もない市民が現金を受け取ったとする買収事件は冤罪の温床といわれている。取り調べた男性に孫の名前を書いた紙を踏ませて自供を迫った2003年鹿児島・志布志選挙違反事件は起訴された13人が、また警察が現金受け渡しの会場まででっち上げた1986年大阪・高槻買収事件では史上最多147人全員が無罪となっている。

 すぐに思い出すだけでも過去、これだけ罪のない人を泣かせながら、このたびは罪を認めて丸刈りになった市長までいたのに、全員不起訴とはどういうことだ。

 検察は元法相という大物を追い込むには金を受け取った側の〝協力〟が不可欠だったとする。だが今回、多額の現金を受け取ったのは名もない市民ではない。選挙違反が民主主義を根底から破壊することを熟知している議員ではないか。 

 諄々と諭し、心静かに法の裁きを受けさせる。それこそが「検事の本懐」ではないのだろうか。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年7月12日掲載) 
   

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