記者をGPS監視は五輪組織委の傲慢だ
-コロナとオリンピック-
傲慢としか言いようのない東京オリンピック組織委員会の姿勢にあきれ返る。橋本聖子会長は来日する報道関係者について、これまで認められていた友人宅などの宿泊を禁止してホテルなど150カ所に集約。GPSで一部行動を監視するとともに、14日間の待機期間中の外出、取材は滞在先に活動計画書を提出させることを明らかにした。
新型コロナの予防はわかる。だけどそれがなぜ、記者の取材活動の提出なのか。嫌~なことを思い出した。
1990年代初めの中国取材。訪問先、対象者、目的。すべて事前に公安処に届け出る。「不是、ブーシー(ノー)」。外国人立ち入り禁止の未解放地域であることなどを理由に大半が不許可。それでは仕事にならないので勝手に動いて翌日、同じ書類をまた出す。
「あなたたち、ここと、ここは、きのう行ってきたね」。なんのことはない。24時間、尾行、盗聴、盗撮。行動監視されているのだ。
1990年代半ばの北朝鮮。政府の案内係と称する労働党幹部がホテルを出てから戻るまでべったりとくっつく。これまた取材にならないので、早朝ホテルを抜け出してピョンヤンの町を走りまわって素知らぬ顔でホテルに戻っていると、労働党幹部はニッと笑って「朝のお散歩はどうでしたか」。市民の密告制度は徹底している。
別の日、北朝鮮から東京のデスクに電話をしていたテレビ局員が「名物の冷麺は食べ飽きた。カレーが食いたい」とボヤくと、翌朝、食堂に入る前からカレーのにおいが漂っていたとか-。
そこのけそこのけ五輪が通る。私たちが誇りをもってきた自由の国・日本まで、かなぐり捨ててしまうのか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年6月21日掲載)
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