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2021年4月

2021年4月28日 (水)

路上のバカ騒ぎ取り締まりを

-居酒屋ばかり厳しくしても-

 朝日放送テレビ(大阪)の夕方ニュース番組「キャスト」の先週のスタジオ。週明けにも発令される緊急事態宣言の話題でゲストの女性弁護士が「私が住んでいる東京の表参道では夜になると若い人が歩道でお酒を飲んで大騒ぎ。居酒屋さんには随分厳しいのに、ちょっと矛盾してませんか」と、語気を強めた。

 そのコメントに合わせるかのように、京都・鴨川の夜の映像が流れる。ビールの空き缶が転がる河川敷で男女の若者が互いの肩に手を乗せて踊っている。表参道や鴨川だけではない。東京の高田馬場駅前では深夜までバカ騒ぎをする学生の姿が度々テレビで流された。

 ゲストのコメントを受けて私は「道路や河川には国や都道府県といった管理者が定められている。なぜ警察は、それら管理者と連携して機動隊を出すなどして取り締まりをしないのか」と指摘させてもらった。

 若者の乱行だけではない。飛行機の機内やホテルでマスクを着けず、着用を促されると屁理屈をこねて大暴れ。あるいはJR大阪駅でマスクなしで電車に乗り、他の客が飛んで逃げたあとも車内に居座り続けた男。だけど警察は、飛行機やホテルの屁理屈男に千葉の食堂で3度目の大暴れをされて、また逮捕。大阪駅の男は説得して帰宅させた。

 時短や休業。破れば過料を科せられる店の経営者から「なぜ私たちばかり」の声が出るのも当然だ。もちろん公権力の行使は少ない方がいい。だけど法の施行を急いだ立法府の国会も政府や都道府県といった行政も、爆発的感染は防げなかった。ここは警察をはじめ、司法が1歩も2歩も前に出るときではないのだろうか。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年4月26日掲載)  

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2021年4月21日 (水)

旧日本軍そのままではないか

-コロナに対する国の対応-

 先週のこのコラムに「物事を戦争に例えるのは好きではないが」と書いたが、新型コロナウィルスに対するこの国の戦い方は兵力を小出しにしては全滅に次ぐ全滅。旧日本軍そのままではないか。

 変異ウイルスが猛威をふるう大阪では先週、224の重症病床に対して重症患者が261人と、河川でいえば、ついに堤防が決壊してしまった。来月4日には重症者は400人を超え、危機は一層、高まる。

 そんなとき、府が出した対策は大学の授業のオンライン化や小中、高校の部活の中止要請などだ。重症患者の命が危ないときに子どもたちから部活を取り上げて、いったい、なんの意味があるのか。

 その大阪のほか宮城、兵庫は4月5日にまん延防止等重点措置を適用。すると1週間遅れで東京、京都、沖縄が後を追い、さらに明日20日からは息せき切って駆け込んできた神奈川、埼玉、千葉、愛知の4県に適用される。まさにチョロリチョロリの小出し対策。

 こうした状況に政府の尾身茂分科会会長が「感染は4波に入っている」と指摘。また日本医師会の中川俊男会長は「大阪はすでに医療崩壊。一刻も早い緊急事態宣言を」と助言している。

 だが、菅首相は国会で「現時点でそういううねりにはなっていない」と言い放った。科学者でも医学者でもない首相が何をもってそう断言できるのか。ことここに至って、やるべきことは指揮官の更迭しかない。

 そう思いつつ、最後の切り札、ワクチンはどうなっているのか。調べてみると先週半ばで高齢者3600万人の接種率は0・008%。

 なんだか猛り狂う大火災に、注射器で水をかけているような気がしてきた。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年4月19日掲載)

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2021年4月14日 (水)

通天閣より首相官邸に赤信号を

-進まぬワクチン 変異株対策-

 先週、大阪の通天閣と万博記念公園・太陽の塔に赤信号が点灯された。まさに新型コロナ感染は非常事態だ。ただ自治体としては、もはや打つ手がないのではないか。

 物事を戦争に例えるのは好きではないが、変異ウイルスという、これまでにない攻撃力をもった爆撃機が襲ってきている。そんな中、一自治体の大阪に何ができるのか。

 午後8時までに時間短縮された飲食店でのマスク着用の義務化や、アクリル板の設置。そして、これらが実行されているかをチェックする1組2人の「見回り隊」を20組編成した。

 だけど飲食店は大阪市内だけで4万店。1組当たり2000店を、まん延防止期間中の1カ月でどうやって見回れというのか。戦時中のすり切れた映像で見る米軍機の空襲に、竹やりとバケツリレーで立ち向かう姿を思い起こすではないか。

 いま自治体ではなく国が真っ先に実行すべきことは、ワクチンの接種と変異ウイルスのあぶり出しだ。これで立ち向かうしかない。なのに4月初め時点で、ワクチンの接種率は国民の0・65%。これはOECD加盟37カ国中の37位。世界142の国と地域の中で102位。途上国のはるか後ろだ。

 さらに猛威をふるう変異ウイルスのあぶり出しに、政府は各都道府県にセンターを設置。PCR検査陽性者の40%を調べるとしていたが、まだ半分も調べられていない。

 そんな中、きょう12日から東京、京都、沖縄の3都府県でもまん延防止の重点措置が取られることになった。

 医師や学者が第4波の襲来を警告してから3カ月。政府はいったい何をしてきたのか。いま真っ赤な信号で染め上げるべきは、首相官邸ではないのか。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年4月12日掲載)

 

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2021年4月 7日 (水)

しんどくなったら 時には ななめに

-メディアと門出に立つ人へ-

 春は出会いとともに別れの季節。新聞、テレビの世界では、いくつかの連載や番組が消えていく。朝日新聞で月1回、14年間続いた「池上彰の新聞ななめ読み」もその一つ。池上さんは「気づかぬうちに切れ味が鈍っていることがないように」と最終回に書いておられるが、柔らかな筆致で朝日に限らず、新聞各紙をななめに、いやいや縦横無尽に切ったコラムが消えるのは寂しくてならない。

 いまも心に残ることがある。2014年、朝日新聞が従軍慰安婦問題で虚偽報道を認めたとき、「なぜ32年間も訂正しなかったのか。間違いを認めたら謝罪すべきではないか」とした池上さんの原稿を、朝日上層部が掲載を拒否。この対応に、ほかのメディアどころか朝日記者からも怒りが噴出。結果、池上さんにおわびして掲載することになった。

 一方、私事で恐縮だが、昨年5月、朝日社員と産経記者の検察幹部との賭けマージャンが発覚した際、池上さんは私が毎日新聞に寄せたコメント、「いけないことだが、この件で記者の牙が抜かれてはならない」を取り上げ、「この問題を建前だけで論じてはいけない」と書いてくれた。

 朝日と産経が起こした問題で、元読売の私が毎日に出したコメントを元NHKの池上さんが朝日に書く。こんなコラムは、池上さんだからこそ書けたのではないか。

 最終回、池上さんは最近の紙面に「“お行儀”がよくなりすぎてはいないか。批判に耳を傾けすぎると矛先が鈍るのでは」と書かれている。そうそう、そしてしんどくなったら、時にはななめに構えて―。この春、門出に立ったみんなに贈る言葉にも思えてくるのだ。

 

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年4月5日掲載)

 

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