被災地に寄り添える…あのトマト
-「3.11」とコロナ禍を思う-
3.11先週木曜日、東日本大震災は発生10年を迎え、私はテレビ朝日の「スーパーJチャンネル」特別番組に出演した。高台移転や震災遺構、さまざまなテーマを取り上げるなか、心に重くのしかかったのは、福島第1原発の廃炉作業で出る処理水の問題だった。
放射性のトリチウムの残る処理水124万㌧は1061基のタンクに保管されているが、来年秋には満杯になる。これを後世に残すわけにはいかない。政府は基準以下に薄めて海洋放出するのが現実的としている。
だがこの10年、福島の農業漁業は風評被害に泣かされ、漁獲量は今も震災前のわずか17%だ。そこに追い打ちをかけるのは目に見えている。
3年ほど前に福島の「道の駅」に並んでいた、真っ赤なミニトマトが目に浮かんだ。ご一緒した町役場の方が「よがっだ。よその県のものと同じ値段だぁ」と声をあげたのだ。それまでは出荷しても福島産というだけで買いたたかれ、他の産地の半値、ときには2、3割で売られていたという。
あの赤く熟れた福島のミニトマトをスタジオで思い出しながら、私は「震災から10年、誰もが心1つで被災地に寄り添えることがある」とコメントさせてもらった。
それは、自分は決して風評被害の加害者にはならないと決意することだ。日本中の人がそう決心したら、あすにでも福島に対する風評被害は消えてなくなる。事件、事故。ある日、人は被害者になることは避けられなくても、加害者になることは心1つで避けられる。
そのことはコロナ禍で起きるさまざまな差別についても同じなのではないだろうか。そんなことを感じる、あの日から10年であった。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年3月15日掲載)
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