「忘れた」が通用するほど日本の司法は甘くない
-首相長男の総務省接待問題-
こんな調査で逃げ切られてはたまらない。菅首相の長男、正剛氏(首相によると40歳ぐらい)が勤める放送関連会社「東北新社」が総務省幹部を飲ませて食わせて、延べ38回接待していた問題で、武田良太総務相は11人を減給などの処分にするとともに調査結果を発表した。
それによると総務省幹部も長男の会社も「その席で業務の話は一切出ませんでした」とか。当たり前だろ。どこの世界に接待の場で「いっぱいお願いごとをされました」「いっぱいお願いしちゃいました」と認めるバカ正直者がいるか。
こうした事案の捜査に着手したばかりの検事の「まず、まわりをつぶしていく」という言葉を思い出す。東北新社のような放送関連会社は、業界団体の「衛星放送協会」加盟社だけでも82社。検察は総務省幹部を接待したことがあるかないか、1社ずつつぶしていく。
もし東北新社と同じように総務省幹部を年平均8回も接待していたら、82社で年に656回。幹部はみんなぶっ倒れているはずだ。なぜ長男の会社がこれほど接待できたのか。外堀はどんどん埋まっていく。
贈収賄で立件するには合計50万円余りでは少ないと、したり顔で言う識者もいるが、かつて防衛省幹部の夫が接待されたゴルフに12回同行して逮捕された妻もいる。基礎年金約1カ月分の受給額を一晩で飲み食いして「暑気払いや忘年会でした」で通るか。
早くも市民団体が検察に告発した。不起訴になっても検察審査会が待っている。「忘れた」と突っぱね、ウソがばれると「自分の記憶力の乏しさ」とトボける。やせても枯れても、その手が通用するほど、日本の司法は甘くない。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年3月1日掲載)
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