首相の「答弁力」もですが…報道陣も「質問力」に磨きを
-なぜ記者は別のパンチを出さないの-
TBSテレビ「ひるおび!」で時々、ご一緒する鎌田靖さんが近著、「最高の質問力」(PHP新書)を贈ってくださった。鎌田さんはNHKで社会部記者や解説副委員長、「週刊こどもニュース」の2代目お父さんをつとめたベテランジャーナリスト。
どうやって取材相手と信頼関係を築くのか。本音を引き出すか。いまも試行錯誤する姿に「あの鎌田さんでさえ」とうなずいたり、ひざを打ちながら読み進む。
では翻って私たちの報道はどうだ。コロナ禍で医療現場が疲弊、政府への批判が噴出する中、元厚生官僚たちがテレビ出演。「コロナ禍に協力している病院はたった4%。それに大多数の医者は、いまも優雅に暮らしている」とののしる。
ならば、なぜ早くからそのことを指摘しなかったのか。なぜ政権が追い詰められてからの発言なのか。その点を質問したキャスターを、いまだ私は見たことがない。
政権幹部の自民党議員が緊急事態宣言の中、銀座のクラブを3軒もハシゴした。議員はカメラの前で臆面もなく、「店の要望陳情を聞くために昼間時間がとれず夜、動くことになった」。
こんな弁解にムキになることはない。ただ著書の中で鎌田さんもいらだっているが、なぜ記者は別のパンチを出さないのか。「あなたに1票を投じた選挙区の方はこの説明で納得しますか」と切り返したら、まさか「みんなそれで納得する人たちです」と有権者を小バカにした答えはできまい。
収束の見えないコロナ禍の下。首相の「答弁力」もさることながら、同業者のみなさん、私たちの「質問力」にも、もう少し磨きをかけようではありませんか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年2月1日掲載)
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