命の危険 いまや感染者と一般市民双方に
-医療崩壊について- 宣言解除の前に…
大阪の自宅の近所のおばあさんが腸の手術をして退院。その後再入院が必要になったが、病院は新型コロナ患者が重症化、手いっぱいで受け入れられないという。
その大阪では吉村洋文知事が国の緊急事態宣言を、なんとか大阪で前倒し解除ができないかと専門家と議論を重ねたが慎重論が多く、今週、再度協議することになった。大阪は飲食店への時短要請なども全国に先駆けて実施。その分、府民に重い負担をかけた。解除できるなら早くしたいという知事の思いはわかる。
だが解除先送りの結論に、私が出演している報道番組に届いた府民の声は大半が「当然」あるいは「正解」だった。その理由の多くが重症ベッドの窮迫というより、すでに起きている医療崩壊だ。大阪では先月、コロナ感染で入院が絶対条件の90代女性と60代の娘が、なぜか自宅療養。結果2人とも亡くなっている。
大阪だけではない。やはり宣言の早期解除を目指す愛知、岐阜。岐阜ではコロナ感染の高齢男性が入院予定の日の早朝、容体が急変。だが受け入れ先が見つかるまでに3時間かかり、その間に死亡した。愛知では私の出演番組が密着取材している総合病院の副院長が「救急患者の受け入れを拒否したことがなかったのに、力尽きて初めてお断りしました」と肩を落としていた。
命の危険は、いまではコロナ感染者と一般の市民双方に襲いかかっているのだ。
明け方、家の近くで停まった救急車のサイレンに起こされる。20分、30分…受け入れ先がやっと決まって遠ざかるサイレンにホッとする。宣言解除の前になすべきことは、まず、こんな医療からの脱却ではないのか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2021年2月15日掲載)
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