若者に思い伝えられていますか
-総理大臣も中高年も…-
ついに11都府県に発令された新型コロナ緊急事態宣言。記者会見で菅首相が「感染者の半分以上が30代以下のみなさんです」と行動に注意を促すなど、若者への批判が高まっている。
確かに先日の成人式でもコロナ禍の中、「今夜は仲間でオール(ナイト)だ」と叫ぶ若者もいた。ただ、そんな光景を見るにつけ、思い出すことがある。式典の妨害や酒瓶のまわし飲み。そんな騒ぎが始まったころから私は成人式の記念講演はお断りしてきた。若者の胸に刺さるような言葉を届けられないと思ったからだ。
あるとき、テレビでそうした思いを話すと、局を通じて、その年の新成人の女性から手紙をいただいた。
〈たしかにそんな人もいます。でも大多数の若者は、進路に迷い、恋に悩み、それでも前を向いて懸命に歩いてゆこうとしています。どうか、そのことを忘れないでください〉
翻ってコロナ禍のもと、若者に矛先を向けている私を含めた中高年は、思いをしっかり伝えられているだろうか。緊急事態の延長を問われて「仮定の話にはお答えできない」と突っ返す首相の言葉を、若者ならずともみんながどう受け止めるか。
クリスマス直前、ドイツのメルケル首相の全身を震わせた演説が胸をよぎる。
「あれが祖父母との最後のクリスマスだったなんて絶対にさせたくない。それだけは避けたいのです」
いま、私たちが若者になすべきことは、「あなたをこよなく愛してくれている祖父母、ご両親、きょうだい、恋人。そしてなにより、あなた自身のために、どうか行動を慎んでください」。
そんな言葉を投げかけることではないだろうか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2020年1月18日掲載)| 固定リンク
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