日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
「わびる気はない」佐賀県警
-奪われた36歳女性の命-
ひとつの事件をめぐって、全国紙、地元紙、通信社、テレビ局の計4社からコメントを求められた。どれも事件の内容ではなく、佐賀県警の対応についてだ。
昨年10月、福岡県太宰府市で当時36歳の女性が足などをめった刺しにされて死亡しているのが見つかった。福岡県警は女性と同居していた女(41)ら男女3人を逮捕。主犯格の女たちが被害者を監禁、当時佐賀県に住んでいた女性の親族から金を脅し取ろうとしていたことが明らかになった。
だが、実は遺体発見前の昨年6月ごろから、女性の夫や親族に「暴力団に脅されている」と金を無心する不審な電話が女性からかかり、親族が佐賀県警鳥栖署に相談していた。
ところが、署は対応を若い巡査にまかせて、「脅迫されている様子がない」と取り合わず、親族がやっととった音声データを持ち込むと、3時間に及ぶやりとりを「全部書き起こして持って来い」などと、なんとしてでも追い返したいという態度。相談が計11回に及んだところで、女性は遺体で発見された。
さらに先日、親族が記者会見。県警は被害届の受け取りまで拒否していたと明らかにした。女子大生が捜査の怠慢から殺害されてしまった桶川ストーカー殺人事件でさえ警察は、被害届は受理していたのだから、佐賀県警はあれよりひどい。
だが、県警は遺族と事件の認識に違いがあったことは遺憾だとしながらも、いま佐賀では事件に遭っても県警は動いてくれないと不安のどん底にいる県民に対して「わびる気はない」。
ここは国家公安委員会、警察庁。そこも駄目なら、国会が動くべきときではないだろうか。
(2020年12月22日掲載)
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