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2020年9月17日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

水害対策でも命より経済優先なのか
-東海豪雨から20年…教訓生かせるか-

 9・11、先週の金曜日は、戦後最大の都市型災害といわれる名古屋の東海豪雨から20年。いつもの東海テレビのニュース番組で、あらためてこの災害を検証した。

 私も被災から数日後、決壊した新川の堤防などを取材した東海豪雨。接近した台風が秋雨前線を刺激して、総雨量は名古屋の年間降水量の3分の1、567㍉に達し、市の面積の38%が浸水して死者は10人となった。川の氾濫に加えて都市の排水能力が追いつかず、地上に水があふれ出す内水氾濫が大きな原因だった。

 では名古屋をはじめ東京、大阪といった大都市で、この教訓は生かされているのか。確かに東京も大阪も地下数十㍍に水をためる巨大な調整池を建設しているが、それでも東京で荒川が、大阪で淀川が氾濫した場合、それぞれ地下鉄の17、14路線が浸水するという。教訓を生かしたくても、ここ数年、激増する局地豪雨にインフラが追いつかないのだ。

 生かされた教訓もある。それまで新幹線について、JR東海は「ぎりぎりまで走らせ、運休はしない」が原則だった。だがこの東海豪雨では、東京~米原間で70本の列車がだんご状にストップ。5万人が車内に閉じ込められた。その中には阪神戦に向かう巨人軍の選手もいて、翌12日、甲子園球場は晴れているのに試合は中止という異例の事態となった。

 以来、JR各社は180度方針を転換、災害時は早めの「計画運休」を実施。職場や学校も早めの休業、休校が当然のようになった。

 生かされなかった教訓のなかに私が心配でならないものもある。大都会は活気があると同時に、人の入れ替わりが激しい。地方の町や村のように何百年前の地震の碑が立ち、何十年前の洪水でも「水がここまで来て」と語り継いでくれるお年寄りがいない。

 東海豪雨から20年。新川の堤防が決壊した西区上小田井地区にも、いまでは若い夫婦向けの建売り住宅がびっしりと並んでいる。マイクを向けた30代の女性は「(豪雨のことは)聞いていないですね。ええ? あの新川が氾濫したんですか」。

 行政がハザードマップを作って協力をお願いしても、地価の下落を恐れて及び腰の地元の人が多いともいう。新型コロナ禍のなか、またまた命より経済活動か。

 9・11の半年後、東日本大震災は発生10年を迎える。

(2020年9月15日掲載)

 

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