日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
「大学の保身」に声あげるのは君だ
-コロナ禍の学生諸君を思う-
〈繋がらぬ ネット回線 人づきあい〉〈帰省して いない下宿に 金払う〉
4連休もきょうが最後。「Go Toトラベル」にイベントの人数緩和。秋空の下で賑わいが戻る一方、この2句は関西大学がオンライン授業をテーマに募集した川柳で、学生が詠んだ作品。私もテレビやラジオで取り上げてきた。
うん、そうだろうな、大変だよね、と同情しつつ、何かもの足りない。若者が怒りを忘れちゃだめだろうという気持ちが強いのだ。
新型コロナで前期は入学式もなし。やっとオンラインで授業が始まったと思ったら、すぐに夏休み。では秋からの後期授業は、というと、文科省が国公私大1003校を調査したところ、驚くことに後期も8割の大学が対面とオンラインの併用と回答した。もっとびっくりするのは、併用というからには半々くらいかと思いきや、対面は2割弱で、あとはオンライン。前期とほとんど変わらないのだ。
学生よりはるかに年下の小中学生でも教室で授業を受けているのに、なぜだ。番組で話をうかがった尾木直樹先生はズバリ、「大学の保身よ」と言い切る。いくつかの大学の運動部寮やゼミ旅行でクラスターが発生し、世間の批判を浴びた。大学関係者は、そのことばかりに目がいっているという。
結果、どんなことになるか。立命館大の学生が在学生1414人にアンケートしたところ、10人が退学も考え、4人に1人が休学を考えたことがあるとしている。
もちろんそれは授業のやり方だけの問題ではない。私の個人的な経験でも、大学はクラスやサークルで自由闊達に議論する時間を提供してくれると同時に、生涯の友とも出会わせてくれる。そういう場だと思う。そのいずれも得られないと感じたとき、退学、休学が浮かぶのはわからないではない。
だけど学生諸君、それでいいのか。たとえキャンパスに入れなくてもSNSがあるではないか。まずは学内で、そして大学の壁を越えて手をつなぎ、大学に怒りの拳を突きつけたらどうだ。全共闘世代のたわ言ととってもらってもいい。
〈学生も 学校行かなきゃ ニートかな〉
そんなことを言っていてどうするんだ。将来、社会の不合理に、不条理に、怒りをぶつけていくのは君たちではないのか。
(2020年9月22日掲載)
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