日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
大阪市提案など否決 すべてコロナのせいか
-関電株主総会に思う-
新型コロナウイルス対策で東京のテレビ、ラジオはリモート出演が続く中、大阪でこのフラッシュアップを書くパソコンの電源は、もちろん関西電力からのものだ。その関電の電力には九州電力とともに、いまはわずか2社、原発からのエネルギーが含まれている。
その原発マネーをめぐって昨年、原発がある福井県高浜町の元助役(故人)から、75人もの関電役員らがお仕立て券つきスーツに小判に金の延べ棒、江戸時代の悪徳商人、越前屋もたまげるような3億6000万円にのぼる金品を受け取っていた問題が発覚。それ以来、初の総会となった。
とはいえ、大阪のテレビ番組で中継をまじえて総会を報道しながら、これほどコロナコロナを前面に打ち出した総会はほかにないのでは、というのが取材記者を含めたみんなの感想だった。
この関電、金品おもらい問題のあとも、東日本大震災で業績が悪化して家庭料金を値上げした際、痛みを分かちあいますとカットした役員報酬を、その後、状況が好転すると、こっそり返していた事実が発覚した。どこまで金に汚いんや。
なのに、この日の総会。早くから「コロナ感染拡大防止」を理由に出席自粛を呼びかけ、大阪・住之江区の3500席の会場の席数を700席に減らし、この日、実際に来場した株主はわずか384人で過去最低だった。
加えて、これまで1人4分だった質問時間を1分に制限。会場には1分計を置いて、大阪市の代理人、河合弘之弁護士が「透明性がないまま原発をこのような形で続ける限り、また不祥事は起きる」と、4分を過ぎて質問を続けると、議長の森本孝社長は7回も質問を遮ったあげくに「議事妨害だ。これ以上続けると発言禁止とする」。
こうした制限の理由について、関電側は一貫して「総会はあくまで(コロナの危険から)株主の安全を第一として、議長一任とさせてもらった」。その結果、筆頭株主の大阪市が提案した「一般的範囲を超える贈答、接待を受けた際の記録の保管」といった26の議案はすべて否決された。
市民がコロナにおびえながらも経済活動を復活させようとしているときに、そのコロナ禍を奇貨とする経済人がいる。
ウイルスは恥を知らない人々に、新たに感染しつつあるようだ。
(2020年6月30日掲載)
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