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2020年7月 9日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

1億5000万円持たせたのは誰だ
-買収資金交付罪で告訴、告発を-

 「“もらっていない”と言ったのは、うそじゃない。いまも“預かっているだけ”だから」と言い張って謝罪会見する市長がいる。丸坊主になった市長がいるかと思ったら、「胸元にねじ込まれて、返せなかった」と、めそめそ泣く市議がいる。テレビで放送しながら、ムカッ腹が立ってきた。

 衆参議員の河井克行(57)案里(46)容疑者夫妻の公選法違反買収事件。広島県内の市長や県議、市議、町議ら94人に配りまくった現金は計2570万円。ここにきて、その金をもらった側がまるでドミノ倒しのように「じつは私も」「いままでウソをついてました」と告白謝罪合戦。どうやら早めに白状して検察のお目こぼし、起訴猶予を狙うというのが、もっぱらの見方だ。

 とんでもない話だ。記者時代、私もさんざん扱った選挙違反事件。町内会長の誘いで行った懇親会で最後に市議があいさつしたので、お料理数千円分の供応罪に問われたというご婦人。受け取った政策パンフに入っていた3000円入りの封筒。危ないと思って神棚に置いていたけど、買収で略式起訴。「孫が学校に行けない」と泣いていた初老の男性。

 いずれも罰金刑とはいえ、前科となる。気の毒だけど、選挙は民主主義の根幹。金で票を買われたら制度は成り立たない。それが数十万から200万円ももらった県議や市長が起訴猶予狙いとは、あきれるばかりだ。

 さらに起訴猶予狙いのもう1つの理由に有罪となったら公民権が停止され、県下は市長や議員の出直し選や補欠選挙だらけになって広島の地方自治は大混乱に陥ってしまうというものがある。バカも休み休み言え。

 案里容疑者に、同じ自民党の対立候補の10倍、1億5000万円もの選挙資金を持たせたのは、どこの誰か。

 約1カ月後、8月6日の原爆の日。人類初めての惨禍から目ざましい発展を遂げた広島。市民の球団、赤ヘル軍団の胸のすくような活躍が何度もあった。その広島を、あれから75年、これほどの汚辱と屈辱にまみれさせた大元は誰だ。

 いま、広島県民が早急にやらなければならないことは、案里容疑者にこれほど巨額の持参金を持たせた組織、団体を公選法の買収資金交付罪で告訴、告発することだ。事態は急ぐ。一刻も早く、どなたか手を挙げてくれないだろうか。

(2020年7月7日掲載)

 

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