日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
経済まわすよりまず命を守れ
-あきれるコロナ対策の補正予算-
新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言は明日6日以降も延長されることになった。ステイホームに休校、商店などの休業が今月末まで続くのかと思うと、正直げんなりしてくる。だけどウイルスとの熾烈な戦い。ここは力を合わせて長丁場を乗り切るしかない。
ただ、このところ気になることがある。私がこうしたコラムやテレビ、ラジオのコメントで「いまは命を守り抜くこと。経済はみんなが元気になってから立て直したらいい」と主張すると、一部の政治家、評論家から猛烈な反発を食う。
「経済がまわらないと、国がまわっていかない」「経済の9割が止まったら、政治は持たない」…。
もちろん、ここで言う経済、つまりお金は国民1人につき10万円の給付金や休業要請に応じた個々のお店への協力金のことではない。国の予算や国家の経済財政のことである。
減少傾向にあるとはいえ、感染者は1万5000人を上回り、死者は残念ながら増加傾向にあって500人を超えた。そんなとき国がするべきことは、経済ではない。感染者を減らし、1人でも多くの重症者の命を救うことではないのか。
家庭でいえば、病と闘う家族に「お金のことは心配しないで早く元気になって」と声をかける。それが当たり前ではないか。枕元で預金通帳広げてため息をつく。そんな家がどこにあるか。
いやいや、私たちの国だって、そこはきちんと、と思われる方もいるだろう。ならば先日成立したコロナ対策の補正予算。安倍首相側近の経産官僚が盛り込んだコロナ終息後の「GO TO キャンペーン」を見てほしい。上限2万、つまり2万円のホテルがタダになる旅行券に、レストランでは1000円のポイント。イベントのチケットは20%オフの大盤振る舞いで、予算総額1兆7000億円。
ではこの補正予算の感染予防、医療整備費は、というと、喫緊のワクチン、治療薬の開発に275億、人工呼吸器確保に265億、検査体制に49億など総額6700億円。「GO TO」予算の半分どころか4割だ。
これが政治家、評論家の言う「経済がまわる」ということか。だったら、私はどれほど叩かれようと「命を守り抜け」と叫び続ける。
敵はウイルスだけではない、長丁場になりそうだ。
(2020年5月5日掲載)
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