日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
本当、この政権には温かみがないですね
-小麦を値上げするなんて-
首都圏より一足早く緊急事態宣言が解除になった大阪、兵庫、京都。ホッとする一方で百貨店にできた行列を「大丈夫かな」と不安そうに見つめる人もいる。
そんな折、大阪で手広く小麦の卸をしている老舗の社長、長いおつき合いのKさんから「小さなことかもしれませんが、ステイホームのなか、子どもと一緒にパンやピザを焼く。新しい生活様式が根付いてきた時に、国がこんなことをしてどうするの」という怒りの電話とともに、データをつけたメールが届いた。
日本の小麦需要は年間500~600万㌧。8割以上を米、豪、カナダの3カ国から国が輸入。価格も前年調達費に海上運賃、保険経費を乗せ、そこに国のマークアップ(マージン)を加味してほぼオートマチック(機械的)に算出、製粉会社に売却するという。
〈今年の小麦価格は3月に農水省が発表したのですが、向こう半年、3・1%の値上げでした。大手製粉会社をはじめ業界は新型コロナ禍に考慮して据え置きを強くお願いしたのですが、農水省は今年も既存のルール通りと、4月に値上げを強行してしまいました〉
それにしてもこの時期に、なんということを。
〈結果、製粉会社は、業務用小麦は6月20日から1袋(22㌔)につき、粉の種類別に55円から75円の値上げを発表。家庭用は7、8月に実施されるはずですが、まだ発表はされていません。いずれにしろ業務用、家庭用ともに国が管理する主食の1つを何も考えず値上げすることは、額の大小ではなく絶対にやるべきではありません〉
そんななかKさんは、自分の会社も6月20日から仕入れは上がるけど、こんな時期、9月まではいまのままでがんばってみると言う。
いいぞ、Kさん。ところで今回の値上げでお国には、いくら入るのでしょうか。
〈1㌧当たりの値上げ1530円×420万トン(推定年間流通量)の半年分、32億1300万円。例のアベノマスクの予算、466億円の10分の1にもならない額なのです。これだけのお金で、なぜ子どもとの手作りブームに水を差すのでしょうか〉
本当、この政権には温かみがないですね。
手作りのアベノミックスピザに、アベノミックスサンド。アベノマスクより、ずっとほんわか、温かみが感じられるはずなのにね。
(2020年5月26日掲載)
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