日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
自らを律する気持ちがこの国にはないのか
-IRカジノ推進する安倍内閣-
今週もまた新型コロナ禍。「ウイルスと戦っている府民、都民の怒りは、相当なもの。店名公表前にぜひ休業を」と、私もテレビやラジオでコメントさせてもらったのだが、結果、大阪は営業を続ける6店舗のパチンコ店の店名を公表。2店は公表後休業を決めたが、4店は先週末も営業を続け、いつものにぎわいだったという。大阪に続き東京は、きょうにも小池知事が店名公表に踏み切るとしている。
「閉めたら経営者も店員も路頭に迷う」と言うが、それは同じように休業要請されているバーもカラオケボックスも一緒。そんな勝手な理屈は通らない。
だけど、だ。ここは店名公表の指針を示した国も公表した自治体も、なぜ、休業要請した中でパチンコ店だけがこの状態なのか。しっかり考えをめぐらせてほしい。大阪で、東京で、テレビ局がインタビューした客の声を聞けば、すぐにわかることではないか。
「アホですわ。アホを承知で来てますんや。焼かな治らんでしょうな」「私の日課。日課を休むわけにはいかないんですよ」
私たち事件取材をしてきた者が、いやというほど見てきた薬物依存症、アルコール依存症、そしてギャンブル依存症。その症状に酷似しているではないか。
なのに国も自治体もパチンコ店に厳しい姿勢をみせるだけで、こうした人に対するカウンセリングや治療を進める様子はない。
なぜか。じつはコロナ禍のなか、ほとんど報道されていないが、長ったらしいけどわかりやすい質問主意書が立憲民主党議員から内閣宛てに出ている。
「新型コロナウイルス対策を最優先し、IRカジノの推進を一度踏みとどまるべきことに関する質問」
だがこの質問に対する安倍内閣の4月18日付答弁は、「現時点では感染症がカジノ計画に支障を来していない。自治体からのIR区域整備計画の提出期限(7月)を変更する予定はない」という、素っ気ないもの。
要するにコロナ禍がどうだろうと、パチンコ店がどうしようと、新たな国営、公営ギャンブルは何がなんでも推進するというのだ。
営業を続けるパチンコ店の肩を持つ気はない。だが災禍の中、自らを律する気持ちがこの国にはないのか。
(2020年4月28日掲載)
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