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2020年4月 9日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

愚策押しとどめるブレーンいないのか
-アベノマスクに200億円-

 ―患者の急増で医療現場は機能不全に陥りつつある。資金繰りにあえいでいる中小企業の多くは、悲鳴をあげている。優先すべき政策は山のようにある。首相の決断を押しとどめるブレーンはいなかったのか―

 じつはこれ、およそ安倍首相や政権批判などしたことのないコラム、産経抄の一文。首相が新型コロナ対策に各世帯に布製マスク2枚を配布すると打ち出した翌日に掲載された。
 
 布を重ねた、洗濯可能なマスク。1枚200円とか。布製は目が粗く、効果のほどは定かではないが、5300万全世帯に配布すると、経費は100億から200億円にのぼる。さっそくメディアやネットでは、これぞ“アベノマスク”と、からかいの大合唱だ。

 そんななか、私は先週も東京、大阪、名古屋のテレビ、ラジオ番組でこの新型コロナ問題にふれてきた。連日、感染者が増え続ける東京では志村けんさんの死を悼みつつ、この疾病の恐ろしさ、さらにはECMOと呼ばれる体外式膜型人工肺に必要なマンパワーと、それにかかる医療費を取り上げた。

 大阪ではインフルエンザワクチンのように鶏卵で増殖させるのではなく、コロナウイルスの遺伝子を取り出して作るワクチンの開発に取り組む大阪大学の研究者を紹介した。この方法だと、早ければ年内に治験に持ち込めるという。ただ、それまでにかかる研究費に頭が痛い。「アメリカのように1000億円単位とは言わない。せめて百億、いや数十億の開発費がほしい」という切実な声を聞いた。

 名古屋では大村秀章愛知県知事を招いて、国の医療崩壊を阻止せよの号令で軽症者の隔離施設確保に奔走する県の実態をうかがった。

 その一方で重症者を受け入れる名古屋大学病院の医師からは、日本はICU、集中治療室の数では、すでに医療崩壊を起こしているイタリアの半分、崩壊しつつあるアメリカのじつに5分の1という、凍りつくような実態を知らされた。

 そんなときに、な、な、なんと、この政権は行き届かない世帯や家族のためにマスクを追加配布すると発表。さっそくネット上では「これぞアベノマスクの第二の矢」と、さんざんからかわれる始末。

 ―政権のこんな愚策を押しとどめるブレーンはいないのか。

 

(2020年4月7日掲載)

 

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