日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
戦っているのは国でも政権でもない 名もない市民なのだ
-緊急事態宣言出されてからの日本-
きょう14日のTBSテレビ、「ひるおび!」(月~金午前10時25分)に、私は大阪の事務所からスカイプで出演する。これまで災害や事件の現場からの中継は何度も経験しているけれど、スカイプというのは初めてだ。
そしてきのう13日の文化放送ラジオ、「くにまるジャパン極」(月~金午前9時)は、大阪から電話出演。さらに20日の静岡朝日テレビの「とびっきり!しずおか」(月~金午後4時40分)は、やはり大阪から中継による出演となる。
もちろん、これは7日に新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が出されたから。私は東京、大阪という対象都市に加えて名古屋も毎週行き来している。テレビ各局は、こうした出演者の移動を原則すべてとめ、事務所と自宅が大阪にある私は大阪からの出演となった。
一方で東京からゲストを呼べなくなった大阪のABC(朝日放送)テレビ、「キャスト」にはレギュラーの出演日以外でも助っ人で飛び込む。メディアの世界に身を置いて半世紀。経験したことのない、まさかの日々である。
だけど私はお店を閉じた方や活動の場を失っているアーティスト、アスリートが大勢いるなか、メディアとして当然すぎる対応だと思っている。というのも私は、この緊急事態は欧米各国と違って、国や時の政権ではなく、私たちみんなの力で乗り越えて行くものとして捉えているからだ。
刑罰のついた外出禁止などではなく、あくまで自粛の要望であるこの宣言に欧米の新聞はさっそく「みせかけ」「楽観的」の大合唱。だけど、はっきり言って余計なお世話。ならばちょっと散歩に出た人を警官が殴りつける。感染者をGPSで監視する。そんな社会がいいのか。日本はそういうことなしに、この事態を乗り越えようとしているのだ。
宣言が発令された日、日経新聞の論説委員長は「民主社会が試されている」として「だからこそ市民や企業の役割が大切になる。日本の民主主義社会の強さが試されている」と書き、「宣言が出されたこの日が、日本がコロナ危機に打ち勝った契機として歴史に刻まれることを望みたい」としている。
戦っているのは、国でも政権でもない、名もない多くの市民なのだ―。慣れないスカイプなどを通して、私もそんなことを訴えられたらと思っている。
(2020年4月14日掲載)
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