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2020年4月

2020年4月30日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

自らを律する気持ちがこの国にはないのか
-IRカジノ推進する安倍内閣-

 今週もまた新型コロナ禍。「ウイルスと戦っている府民、都民の怒りは、相当なもの。店名公表前にぜひ休業を」と、私もテレビやラジオでコメントさせてもらったのだが、結果、大阪は営業を続ける6店舗のパチンコ店の店名を公表。2店は公表後休業を決めたが、4店は先週末も営業を続け、いつものにぎわいだったという。大阪に続き東京は、きょうにも小池知事が店名公表に踏み切るとしている。

「閉めたら経営者も店員も路頭に迷う」と言うが、それは同じように休業要請されているバーもカラオケボックスも一緒。そんな勝手な理屈は通らない。

 だけど、だ。ここは店名公表の指針を示した国も公表した自治体も、なぜ、休業要請した中でパチンコ店だけがこの状態なのか。しっかり考えをめぐらせてほしい。大阪で、東京で、テレビ局がインタビューした客の声を聞けば、すぐにわかることではないか。

 「アホですわ。アホを承知で来てますんや。焼かな治らんでしょうな」「私の日課。日課を休むわけにはいかないんですよ」

 私たち事件取材をしてきた者が、いやというほど見てきた薬物依存症、アルコール依存症、そしてギャンブル依存症。その症状に酷似しているではないか。

 なのに国も自治体もパチンコ店に厳しい姿勢をみせるだけで、こうした人に対するカウンセリングや治療を進める様子はない。
 なぜか。じつはコロナ禍のなか、ほとんど報道されていないが、長ったらしいけどわかりやすい質問主意書が立憲民主党議員から内閣宛てに出ている。

 「新型コロナウイルス対策を最優先し、IRカジノの推進を一度踏みとどまるべきことに関する質問」

 だがこの質問に対する安倍内閣の4月18日付答弁は、「現時点では感染症がカジノ計画に支障を来していない。自治体からのIR区域整備計画の提出期限(7月)を変更する予定はない」という、素っ気ないもの。

 要するにコロナ禍がどうだろうと、パチンコ店がどうしようと、新たな国営、公営ギャンブルは何がなんでも推進するというのだ。
 営業を続けるパチンコ店の肩を持つ気はない。だが災禍の中、自らを律する気持ちがこの国にはないのか。 

(2020年4月28日掲載) 

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2020年4月23日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

戦う相手はウイルス 市民同士ではない
-コロナ禍で聞いた嬉しい話 やりきれない話-

 30年間、窓辺から東京タワーを眺めていたホテルとは、しばしの別れ。先週から東京、静岡のテレビ、ラジオ番組はすべて大阪からスカイプなどによる中継。スタジオからの放送は大阪・ABCテレビの夕方ニュース、「キャスト」だけとなった。まさに新型コロナウイルスとの臨戦態勢。

 先週のこのコラムに「戦うのは国でも政権でもない。名もない市民だ」と書いた。

 うれしい話も聞いた。政府が当初、当座の金として出すと言っていた1人当たり10万円が、2カ月遅れのいまごろになって当座の金として支給されることになった。大阪のごく普通のおばちゃんはキャストのインタビューで。

 「そら、ありがたいけど、ほんまに困ってはる人がいるんやったら、そっちにまわしてあげたら。私らは、なんとかなるよってに」

 やりきれないこともあった。自治体の知事が業種によって休業要請した夜。大阪・北新地の老舗のバーのマスターは「自分の給料はあきらめた。けど従業員の生活もある」と、常連さん相手に店を開くと取材に答えてくれた。ところが夜の全国ネットでもこのニュースを流すと、店には「つぶしてやる」「火をつけるぞ」といった電話がかかり続けた。

 もちろん一方的にマスターの肩を持つ気はない。だけど翌日の放送でキャスターが「みなさんにはそれぞれの生活があります。卑劣な行為は絶対にやめてください」と訴え、私も「戦うのはウイルスとであって、決して市民同士ではない」とコメントさせてもらった。

 うれしい話に戻って、大阪市の松井一郎市長が、医療現場の防護服が底を尽いて雨がっぱでしのいでいると聞いて「ご家庭、会社で眠っている雨がっばがあったらぜひ譲って」と呼びかけ、番組でも紹介したところ、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)などからの大口寄贈もあって、たった3日で10万枚。市長は「予想を超える数に感謝」としたうえで、「個人からの買い取りは終了。あつかましいようやけど、企業からの寄贈は続けます」。

 こんなあつかましさは大いに結構。市民が泣いて笑って戦って―。番組では週末、医療従事者に感謝を込めて東京タワーなどとともに青くライトアップされた明石海峡大橋や、神戸港の大観覧車の姿を映し出した。

(2020年4月21日掲載)

 

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2020年4月16日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

戦っているのは国でも政権でもない 名もない市民なのだ
-緊急事態宣言出されてからの日本-

 きょう14日のTBSテレビ、「ひるおび!」(月~金午前10時25分)に、私は大阪の事務所からスカイプで出演する。これまで災害や事件の現場からの中継は何度も経験しているけれど、スカイプというのは初めてだ。

 そしてきのう13日の文化放送ラジオ、「くにまるジャパン極」(月~金午前9時)は、大阪から電話出演。さらに20日の静岡朝日テレビの「とびっきり!しずおか」(月~金午後4時40分)は、やはり大阪から中継による出演となる。

 もちろん、これは7日に新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が出されたから。私は東京、大阪という対象都市に加えて名古屋も毎週行き来している。テレビ各局は、こうした出演者の移動を原則すべてとめ、事務所と自宅が大阪にある私は大阪からの出演となった。

 一方で東京からゲストを呼べなくなった大阪のABC(朝日放送)テレビ、「キャスト」にはレギュラーの出演日以外でも助っ人で飛び込む。メディアの世界に身を置いて半世紀。経験したことのない、まさかの日々である。

だけど私はお店を閉じた方や活動の場を失っているアーティスト、アスリートが大勢いるなか、メディアとして当然すぎる対応だと思っている。というのも私は、この緊急事態は欧米各国と違って、国や時の政権ではなく、私たちみんなの力で乗り越えて行くものとして捉えているからだ。

 刑罰のついた外出禁止などではなく、あくまで自粛の要望であるこの宣言に欧米の新聞はさっそく「みせかけ」「楽観的」の大合唱。だけど、はっきり言って余計なお世話。ならばちょっと散歩に出た人を警官が殴りつける。感染者をGPSで監視する。そんな社会がいいのか。日本はそういうことなしに、この事態を乗り越えようとしているのだ。

 宣言が発令された日、日経新聞の論説委員長は「民主社会が試されている」として「だからこそ市民や企業の役割が大切になる。日本の民主主義社会の強さが試されている」と書き、「宣言が出されたこの日が、日本がコロナ危機に打ち勝った契機として歴史に刻まれることを望みたい」としている。 

 戦っているのは、国でも政権でもない、名もない多くの市民なのだ―。慣れないスカイプなどを通して、私もそんなことを訴えられたらと思っている。

(2020年4月14日掲載)

 

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2020年4月 9日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

愚策押しとどめるブレーンいないのか
-アベノマスクに200億円-

 ―患者の急増で医療現場は機能不全に陥りつつある。資金繰りにあえいでいる中小企業の多くは、悲鳴をあげている。優先すべき政策は山のようにある。首相の決断を押しとどめるブレーンはいなかったのか―

 じつはこれ、およそ安倍首相や政権批判などしたことのないコラム、産経抄の一文。首相が新型コロナ対策に各世帯に布製マスク2枚を配布すると打ち出した翌日に掲載された。
 
 布を重ねた、洗濯可能なマスク。1枚200円とか。布製は目が粗く、効果のほどは定かではないが、5300万全世帯に配布すると、経費は100億から200億円にのぼる。さっそくメディアやネットでは、これぞ“アベノマスク”と、からかいの大合唱だ。

 そんななか、私は先週も東京、大阪、名古屋のテレビ、ラジオ番組でこの新型コロナ問題にふれてきた。連日、感染者が増え続ける東京では志村けんさんの死を悼みつつ、この疾病の恐ろしさ、さらにはECMOと呼ばれる体外式膜型人工肺に必要なマンパワーと、それにかかる医療費を取り上げた。

 大阪ではインフルエンザワクチンのように鶏卵で増殖させるのではなく、コロナウイルスの遺伝子を取り出して作るワクチンの開発に取り組む大阪大学の研究者を紹介した。この方法だと、早ければ年内に治験に持ち込めるという。ただ、それまでにかかる研究費に頭が痛い。「アメリカのように1000億円単位とは言わない。せめて百億、いや数十億の開発費がほしい」という切実な声を聞いた。

 名古屋では大村秀章愛知県知事を招いて、国の医療崩壊を阻止せよの号令で軽症者の隔離施設確保に奔走する県の実態をうかがった。

 その一方で重症者を受け入れる名古屋大学病院の医師からは、日本はICU、集中治療室の数では、すでに医療崩壊を起こしているイタリアの半分、崩壊しつつあるアメリカのじつに5分の1という、凍りつくような実態を知らされた。

 そんなときに、な、な、なんと、この政権は行き届かない世帯や家族のためにマスクを追加配布すると発表。さっそくネット上では「これぞアベノマスクの第二の矢」と、さんざんからかわれる始末。

 ―政権のこんな愚策を押しとどめるブレーンはいないのか。

 

(2020年4月7日掲載)

 

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2020年4月 7日 (火)

主な活動予定

2020

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2020年4月 2日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

一時的消費税ゼロしかない
-ゼロに等しいコロナ禍の経済対策-

 先週末から首都圏は移動自粛。関西から毎週、東京に通っている身には、なんだか申し訳ないことをしているような気がする。日本、特に東京は、中国や欧米の爆発的な新型コロナの感染に気を取られているうちに襲いかかられてしまったというところではないか。

 大阪のテレビ番組では先週、阪神タイガースの藤浪晋太郎投手(25)ら3選手の陽性反応に騒然となった。ウイルス感染はそんなふうに健康な人々の体に襲いかかる。その一方で健全な社会の仕組み、特に経済を直撃する。なのに、こちらの方はいまだに対策はゼロに等しい。この日の番組はそこに焦点を当てた。

 大阪では、すでにホテル運営会社が倒産。関西空港内の人気すし店が撤退した。帝国データバンクの分析によると、経済直撃の第1波はまずホテル、旅行会社。2波は飲食店、百貨店。3波が縫製を海外に頼るアパレルやイタリア、フランスが人気のファッション業界に。そして4波は自動車、家電など製造業にやってくる。そしていまは第4波の直前にまできているという。

 なのに対策は百家争鳴ならまだしも、騒音、雑音ばかり。児童手当、母子家庭手当はどうだ。いや、これこそ貯蓄にまわってしまうじゃないか。ならば全員に商品券はどうだ。でも券を印刷して各所帯に届けるまでに、ウイルス感染は収まってしまうじゃないか。

 そもそも、いま落ち込んでいるのは個人だけではない。経済全体なのだ。だとすれば、私は一時的に消費税をゼロにするしかないとは思う。1億円のものが1千万円。1千万のものが100万円も安くなるとなれば消費は動く。これ以上、下がらないから買い控えも起きない。

 なのに、政権はそっちに向かおうとはしない。なぜか。いつか必ず税率を元に戻さなければならない。そのときは必ず選挙でボロ負けする。それが恐い。

 要するに、わが政権が、わが身が、かわいいだけなのだ。とはいえ何もしないわけにはいかない。そこで出てきたのがお肉券にお魚券。会食、外食の自粛で高級和牛、ステーキの売り上げが落ちた。ならばここで、みんなにお肉を食べてもらって景気対策にしようというのだ。

 もはや何をか言わんやだ。さてこのコラム、これがホントの苦肉の策と締めたら叱り飛ばされるだろうなあ。

(2020年3月31日掲載)

 

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