日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
赤木さんを死に追いやったのは、だれだ
-森友学園改ざん問題-妻が提訴
私が事件記者として捜査一課を担当していたとき、神経をピリピリさせていたのが、所轄署から上がってくる変死報告書だった。ABCに分けられ、A変死は他殺など事件性あり。B変死は病死や自殺など事件性なし。C変死は、ABいずれか判断のつかないもの。解剖して時間をかけて判断する。
唐突にこんなことを思い出したのは、近畿財務局元職員の赤木俊夫さん(死亡当時54)の手記と遺書を読んだからだ。これがB変死、自殺で片づけられていいものか。少なくとも自殺に関わる事件性ありとされなければ、法治国家の体をなしていないのではないか。
国有財産管理官だった赤木さんは、森友学園国有地売却問題で財務省による公文書改ざんが報道された2018年3月、自ら命を絶ち、妻が先週、「自殺は改ざんを強いられたからだ」として国と佐川宣寿理財局長(当時)を相手取って提訴した。
手記は国有地問題発覚当時から財務省が国会で虚偽答弁を繰り返していることに「心身ともに痛み、苦しんでいます」と書いたうえで、赤裸々な文字が並ぶ。
〈朝日新聞の(文書書き換え)報道、決裁文書差し替えは事実です。すべて佐川局長の指示です。学園を厚遇したと疑われる箇所は、すべて修正するよう指示があったと聞きました〉
担当官だった赤木さんも改ざんに手を染めることになる。〈修正作業の指示があり、私は相当抵抗しました〉と書かれ、このとき、赤木さんは妻に「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」と打ち明けている。だが、本省の指示に過剰反応、修正は拡大していく。
そんななか、赤木さんはうつ病を発症。〈抵抗したとはいえ、関わった者として責任をどう取るか。この方法しかありません〉。
手記とは別の遺書には、〈最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。命 大切な命 終止府(符)〉と書かれていた。
この赤木さんの死は、だれにも責任はないのか。だったらパワハラはだめでも、パワハラ自殺はだれにも責任はないということになる。
赤木さんを死に追いやったのは、だれだ。赤木さんにこんな手記と遺書を書かせたのは、だれだ。
なにより大事なことは、決して赤木さんの妻だけの戦いにしてはならないということではないだろうか。
(2020年3月24日掲載)
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