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2020年3月19日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

ウイルスバラまき男って誰だ
-人権考慮で氏名公表なし-

 一向に収束の気配が見えない新型コロナウイルス感染。人々が不安や恐怖と必死に闘っているとき、それを逆なでするような信じられないことが起きる。

 陽性と確認された愛知県蒲郡市の56歳の男が「ウイルスをバラまいてやる」と言って、飲食店やフィリピンパブで飲んで、食って、歌って、女性を抱き寄せて。外部からの通報で店が110番したが、警察は防護服を着用しての出動。店に到着したのは男がタクシーで帰ったあとだった。

 市民を恐怖のどん底に突き落とすとんでもない男だが、この男について愛知県の発表はいまもって「男性・50歳代・愛知県のいずれかに在住」というだけ。男性の人権とプライバシーに配慮してのことだという。

 そんな県の配慮に従っていたら市民が危ないと、この蒲郡市や半田市などが反旗をひるがえし、「県が発表したその人はわが市在住です」と公表を決断。それがなかったら蒲郡のこの恐怖の一件は、市民から店への通報もなかったはずだ。

 それでも愛知県が頑として公表を拒むなか、事態はさらに深刻化。愛知県豊田市の30代の女性の感染が確認されたが、市の幹部は「県の方針」として、勤め先や感染経路の公表をすべて拒否。私が出演している東海テレビや朝日、中日の記者の「市民の安全はどうでもいいのか」という強硬な抗議に、やっと口を開いた内容は「県が公表した42例目の男性」というもの。

 その男性こそがウイルスバラまき男で、女性はそのフィリピンパブで接客。たまたま男が座ったソファで化粧直しをして感染したとみられるが、愛知県も豊田市も「42例目」とだけ公表して「その男は、うちの市民」と明らかにした蒲郡市に一切合切、責任を押しつけてしまった。

 国のクラスター対策班が、抵抗があるなか4カ所のライブハウス名すべて公表した大阪府を「感染を防ぐ非常にうまい方法」と絶賛しても、愛知はどこ吹く風。なぜ県は元暴力団員のこの男の人権を、こうまでして守り通そうとするのか。

 ウイルスを感染させられた女性は怖さと悔しさで、泣きじゃくっていたという。

 3月16日現在、新型コロナウイルス感染による死者はクルーズ船を除いて28人。うち愛知県が14人。断トツの全国一である。

(2020年3月17日掲載)

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