日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
いつもの隠蔽と強弁…諸外国は納得せず
-手ごわい新型コロナへの対応策は-
テレビでコメントしたり、こうして原稿を書いていて、最近しきりに名刑事とうたわれたデカさんから聞いた言葉が浮かんでくる。
「事件には、だれがやっても挙げられる事件と、だれがやっても挙げられない事件。そしてもうひとつ、やりようによっては挙げられる事件がある。わしらの仕事は、そのやりようによっては挙げられる事件を挙げることだ」。
新型コロナウイルスによる肺炎はついにクルーズ船から複数の死者を出し、感染は未就学児にまで広がった。たしかに、だれがやってもむずかしい事態だ。
だけど明らかに対応策は間違いだった。別のやりようがあったのではないか。とりわけ海外メディアの反応は手厳しい。
ニューヨーク・タイムズが「クルーズ船はこうしてはいけないという見本」と書けば、フランス24は「浮かぶ監獄」。
こちらの苦労も知らないで、と言い返したい気もあるが、ここは、亡くなった84、87歳といった高齢者は先に下船してもらうことはできなかったのか。陽性陰性を調べるPCR検査をなぜ、もっと早く民間に委託しなかったのか。素直に省みてもいいのではないか。
そうそう、もうひとつ、名刑事の言葉があった。「ナメるな。甘くみるな。事件はどれも手ごわいぞ」。
たしかにウイルスの感染力は弱い。だけど船内で陽性となった人を、収容先がないといって陰性の人の部屋に戻したらどうなるか。ウイルスをナメていたと言われてもうつむくしかない。
じつは、このところ気になってしかたがないことがある。当初、国も自治体も感染者の行動経路、範囲をひた隠しに隠していた。いつもの隠蔽体質だ。そして死亡者の発症時期の微妙な訂正。まさか改ざんではないだろうな。
なにより目立つのは、まともに答えない、はぐらかしと、いつもの強弁だ。船内隔離が批判されると「あれは隔離ではない。検疫の続行だった」。クルーズ船からの下船も「全員陰性を確認した。隔離の必要はない!」。でも早々、感染者が出た。
うんざり、げんなりの国政では通用しても、諸外国が納得するはずがない。いつ終わるか、わからない戦い。でもそのことは、いま「やりよう」を変えても決して遅くはない、ということではないのか。
(2020年2月25日掲載)
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