日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
何でも隠す体質が国民の命を危険にさらす
-新型肺炎感染者の行動経路を明らかに!!-
テレビで放送させてもらうニュース番組も情報番組も、大半が新型コロナウイルスによる肺炎。町や駅は、人の波というよりマスクの波。そのマスクも品切れだという。ここまで来ると押し戻すか、押し切られるかの戦争という気がしてくる。
そんなとき、またぞろ、どうにも我慢のならないことが起きている。国や自治体の市民を小ばかにした、上から目線の情報隠しだ。
これまで日本国内の感染者は20人。地域は奈良、大阪、京都、三重、愛知、神奈川、東京、千葉など広域にわたっている。そうしたなか一部の県では、感染者の国籍から居住する市町村、行動経路や行動範囲、何から何までひた隠しに隠している。
その理由としては、厚労省の方針とするものから風評被害、感染者のプライバシー、またある県の知事のように「必要以上の情報を出すとパニックが起きる」といったものまでさまざまある。だが、そのどれもが「詳しいことを教えたら、ろくなことがない」と、市民をまるで聞き分けのない子ども扱いにしているのだ。
そんななか、さすが「お上何するものぞ」の大阪府。これまで感染が確認された旅行ガイドの女性について、40代、大阪市在住。武漢からのツアーとともに大阪城、ベイエリアに立ち寄り、その後、別のツアーと東京に行き、新幹線、地下鉄を使って帰宅、と明らかにしている。府は今後、感染者が出た場合、もっと詳細に行動経路を公表するという。
気になって大阪のテレビ番組で公衆衛生の専門家に聞いてみると、まさしくこちらの方が科学的で理にかなっている。聞けばコロナウイルスに限らず、ウイルスが感染力を持っているのは、せいぜい1日から2日。たいていは数時間という。とすると、公表した先月末時点で、大阪城などにガイドが立ち寄ってから1週間。もはやウイルスに感染力はない。他方、そのときその場で、濃厚接触によって感染した人がいたとしたら潜伏期間は2週間。ウイルスにまだまだ感染力はある。ガイドの行動を知って、もしやと検診を受ければ二次、三次感染は防げるのだ。
科学的知見の少ない私でさえわかるこんなことを、国が知らないわけがない。なんでも隠す、隠し通す。その体質が、ついに国民の命まで危険にさらそうとしている。
(2020年2月4日掲載)
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