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2020年1月16日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

「?」だらけ…お寒い日本政府の対応
-ゴーン被告〝逃亡〟2週間

 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の逃亡から2週間がたった。この間、私はテレビ、ラジオなどでさまざまコメントしてきたが、このコラムでも今回の件に対する私の思いをしっかり書いておきたい。

 ひと言で言うと、この国の政府は、これほどだらしない、いいかげんなものだったのかということに尽きる。とりわけ私たちのように国の安全と治安に関わりの深い仕事をしている者からすると、呆然とするばかりだ。

 逃亡が発覚したのが12月31日の大みそか。公的機関が手薄になる年末年始を狙ったことは明らかだ。とはいえ、これほどの重要人物を地検は極秘に警察に依頼するなどして行動確認をしていなかったのか。いささか畑が違うとはいえ、内閣情報調査室、国家安全保障局、警察庁は、長期間にわたって逃亡を画策、当日も国内を数百㌔移動していた被告の動きの片鱗さえつかんでいなかったのか。

 外務省はフランス、アメリカ、中東のメディアが伝えるまで全く逃亡を知らなかったのか。一報を入れてくれる友好国さえなかったのか。たとえそうだったとしても、犯罪者引き渡し条約のないレバノンだが、外交ルートで「厳重抗議する。即刻日本に送還せよ」と、なぜ伝えなかったのか。

 航空管制と空港の管理を管轄する国交省は、少なくとも2機のプライベートジェットが逃亡のため日本に入国、うち1機がトルコに出国したことをいつ確認できたのか。関西空港からだったことは米メディアが伝えるまで知らなかったのか。

 極め付きは最も関わりの深い法務省。そもそも検察庁は法務省の外郭組織だ。なのに、法務大臣が事件について正式にコメントしたのは出国してから1週間以上たった1月5日。その文言たるや「逃亡は正当化されるものではない」だって。

 なにより出入国管理は法務省の管轄。発覚と同時に逃亡経路を明らかにできないでどうするんだ。これでは「局」を「庁」に格上げしても、ザル入管と言われても仕方あるまい。

 そして最も情けないのは、こんなお役所なのに、その「行政の長たる」安倍首相は役所を一喝するどころか、今回の件について首相としてのコメントはいまだにない。これが暖冬とは予想ばかり、寒々とした2020オリンピックイヤーの日本の光景なのだ。

(2020年1月14日掲載)

 

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