日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
パラ用具の試行錯誤どうなる?
-ナイキ厚底シューズ-
テレビ番組のスタジオ。陸上競技の実業団の監督やスポーツライター、そんな方々の間で素人の私もトークに加わらせてもらいながら、抱いていた疑問がますますふくらんできた。
ナイキの厚底シューズ、ヴェイパーフライについて国際陸上競技連盟(IAAF)が調査に乗り出し、結果によっては使用禁止など規制がかかるのではないか、と海外メディアが報じた。
なにしろ、この厚底ナイキの威力たるやすごい。正月の箱根駅伝で優勝した青学大10人の選手全員がこの靴を履いて大会新記録。また区間記録も次々に更新された。今年の箱根は全出場選手210人中じつに84・3%、177人もの選手がこのナイキの厚底を履いていて、テレビに映る足元はピンクにピンク、またピンク。19日に広島で行われた男子駅伝もまたしかりだった。
もちろん日本だけではない。昨年10月にウィーンで行われたマラソンでケニアの選手がこの靴で非公式ながら、ついに2時間切りのタイムを出し、女子もまた、やはりケニアの選手が16年ぶりに記録を塗り替えた。
厚底の部分に反発力の強いカーボンプレートを仕込み、その感触は選手に「勝手に足が前に出る」「水上を走っている感覚」とまで言わせるほどなのだ。
だがここにきて国際陸連から待ったがかかった。
「選手は用具に関して公平で、かつ技術がスポーツと相いれないサポートを選手に提供してはならない」とする連盟規約に抵触するのではないかというのだ。
さて、そこで私の疑問だ。この問題を知ったとき、真っ先に思い浮かべたのはかつて見たテレビドキュメンタリーだった。パラリンピックを目指す女性ランナーのために足にフィットし、より強く、より高く、バネのようにしなる義足を試行錯誤しながら作り出していく技工士。まさに二人三脚。そこに流れる信頼関係に胸を熱くした思い出がある。
それにこうしたスポーツ用具の進化が一般社会を、より豊かなものにしたケースも多々あるのではないか。だけどそれもこれも連盟のいう「スポーツと相いれない技術のサポート」なのか。だったら、そもそもパラリンピックもパラスポーツも成り立たないのではないか。
今回は、どなたかこんな私の疑問に答えてくれないかと思い、コラムに書いてみた。
(2020年1月28日掲載)
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