日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
小中学校で「安全」の授業を
-家庭教育では子どもを守りきれない-
「知らない人に付いていかないように言っていたんですが」。12歳の女の子のお母さんの言葉が虚しく聞こえた。もはやそういう次元の問題ではない。先週は子どもたちの安全について、さまざま考えさせられた。
行方不明になっていた大阪市住吉区の小学6年生の少女が430㌔離れた栃木県小山市で保護され、少女とツイッターのDM(ダイレクトメッセージ)で連絡を取り合い、自宅に連れ込んだ35歳の男が逮捕された。男の家にいた6月から家出中の茨城県の15歳の女子中学生も同時に保護された。
この事件のあと、埼玉ではツイッターで知り合った兵庫の女子中学生を誘いだして借家に住まわせていた37歳の男が逮捕された。この男は別の女子中学生も家に連れ込んでいたとして、すでに起訴されている。
テレビ番組で議論しながら、私は、もはや「安全な日常生活」を小中学校で教科の授業にするしかないという思いをふくらませていた。スマホを大多数の児童生徒が持っているなか、SNSによる被害は一昨年、小学生で倍増している。だけど有害サイトを遮断するフィルタリングをさせている親は38%にすぎない。
はっきり言って、子どもに迫りくる危険について親が対応不能に陥っているのだ。その危険とは何か。主に3つある。今度の事件のようなスマホのSNSを使った誘い出しや連れ歩き。2つ目が児童ポルノの撮影や少女買春といった未成年者を対象にした性犯罪。そして3つ目が芸能人逮捕が相次いでいる大麻やMDMAといったクスリだ。
スマホに児童ポルノ、それにクスリ。どれもこれも親の時代に身近にあったものではない。自分自身や友だちがそのことで危険な目に遭ったことは、まずない。経験則のない怖さは、親から子へ伝えていくことができない。ということは、もはや家庭教育では子どもを危険から守りきれないのだ。
かつて大リーグを取材したとき、選手のオフの日のボランティアというと、学校に出かけ、先生や親と一緒になって子どもたちにドラッグに手を出さないことを約束させる授業だった。
ひるがえってわが日本。小中学校に「特別の教科 道徳」が採用されたように、保護者も交えた「特別の教科 安全」を始めるときが来ているように思うのだ。
(2019年12月3日掲載)
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