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2019年12月19日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

「桜のせいで「反社」特定できず?
-山口組系抗争 緊迫してるのに…-

 年の瀬、とりわけ関西を中心に反社会的勢力、暴力団をめぐる状況がいつもに増して緊迫している。兵庫県尼崎市の商店街で夕刻、山口組系組員が対立する神戸山口組系幹部に自動小銃を発射して殺害。それ以前には神戸山口組系幹部が山口組系組員を銃撃。その2カ月後には、神戸山口組系組員2人が組事務所前で山口組系組員に射殺されている。

 この事態に兵庫、大阪、愛知などの6府県警は両組を特定抗争指定暴力団とすることにして、今週から組幹部の聴聞を行うことになっている。だが、ここにきて取り締まる側も私たち報道する側も、頭を抱える事態になってしまった。

 なんと震源地は、例の首相主催の「桜を見る会」。早々国会を閉じて逃げの一手に出たのだが、招待客のなかには詐欺容疑で捜査中の「ジャパンライフ」の会長や全身入れ墨のそれらしき男たちの姿。野党から「血税で反社会的勢力を呼んだのか」と激しく追及されて、苦し紛れに放ったのが、「反社会的勢力の定義」。

 これまでは政府の犯罪対策閣僚会議で「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して、利益を追求する集団、個人」と定義されていたのだが、野党から指弾されるや、「反社会的勢力の形態は多様で、限定的、統一的に定義することは困難」と閣議決定してしまったのだ。つまり、いままでの定義をひっくり返して、「反社を呼んだって言われても、だれが反社かわからないもん!」と、いわば尻をまくったのだ。

 さあ、そうなると暗礁に乗り上げてしまいそうなのが両組の特定抗争指定だ。指定されると、対立する組の事務所の様子をうかがったり、相手の組員の動向を探ることが禁止され、違反するとその場で逮捕される厳しいものになる。

 だけど、現実問題として相手の組の様子や組員の動きを探るのに、顔も名前もバレバレの自分のところの組員を使うお人好しの組があるはずがない。それこそ、いわゆる半グレや密接周辺者と呼ばれる反社会的勢力の出番となる。だけどその連中を逮捕したくても、「政府が定義できないと言っているのに、どこが反社だ」と尻をまくられたら手も足も出ない。

 市民の安全なんてどこ吹く風。いかがわしい桜の会の幕引きのためならなんでもやる。季節外れの花冷えの年の瀬である。

(2019年12月17日掲載)
 

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