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2019年12月12日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

辺野古の海と首里城再建
-国と沖縄県めぐり様々な声-

 12月とは思えないやわらかな日差しが城壁に降りそそいでいるのに、みんなの顔からほほ笑みが消えていた。

 焼失した沖縄・首里城を訪ねてきた。守礼門から木曳門まで数百㍍の規制が解かれたが、焼けて崩れ落ちた正殿は見えるはずもない。遠目にも赤瓦がどす黒く焦げているのがわかる南殿、北殿の屋根は、その火勢の強さを物語っていた。

 だが、そんな火の海のなか奇跡的に正殿の前にすっくと立っている大龍柱。その龍柱を制作した彫刻家で琉球大名誉教授の西村貞雄さん(77)からさまざまなお話をうかがった。もろい砂岩でできている龍柱は焼け残っても正殿などと同様、造り直すしかない。ただし造り直すにあたっても、いま論議が起きているという。

 西村さんたちは前回と同じように細部にわたって復元すべきと考え、他方、正殿などは外形は元通りにして内部は復元にこだわらず、スプリンクラーなど防火対策を優先すべきという声もある。西村さんは、「時間をかけて県民同士でじっくり議論したい」という。
 
 再建をめぐっては国と沖縄県のありようにも、いろいろな声が飛び交っている。

 県民投票で7割が辺野古米軍基地反対という声に押されて当選した玉城デニー知事は、火災の翌日には「復元には特段のご高配を」と首相官邸を訪問。菅官房長官は「財政措置を含めてやれることは全てやる」と確約。安倍首相からも「再建に全力を尽くす」という言質を引き出している。

 こうした動きに対して、たとえば當間盛夫沖縄県議は「ダメ、ダメ、玉城知事の今回の動きは全部ダメ」と語気を強める。基地をめぐって沖縄県と裁判までして争っているときに、国にとって知事の動きはありがたく映るはずだという。

「基地については国と全面対決、首里城復元は国に全面支援を、というのでは、知事を支える県民も、それに多くの国民も違和感を抱くのではないでしょうか」

 首里城取材のあと、足を伸ばした辺野古の海。日曜で土砂投入のない大浦湾のエメラルドの海は、いつもにも増して美しい。首里城がそうであるなら、この海もまた、沖縄のアイデンティティーのはずだ。

 あってはならないことだが、首里城は自らの身を焦がして「沖縄」を問うているように思えるのだった。

(2019年12月10日掲載)
 
 

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