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2019年11月21日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

「首里城復元は沖縄の人々の心の復元でもあった…」
-東海テレビの取材DVD-

 あらためてどれほどつらくなるか、そんなことを考えてなかなか見る気になれなかったDVDを、火災から10日余りたって、やっとディスクにかけることができた。

 10月31日未明、正殿、南殿をはじめ主な建物が全焼した世界遺産の首里城。それまでの沖縄の取材というと、大半がかつての大戦で地上戦となった沖縄戦だったり、あるいは米軍基地。私は2年前、1度そこから離れて、ほぼ復元が実現した首里城を取り上げてみたいと思った。

 その東海テレビの取材は、いま思えばまことに得難いものだった。復元に力を注がれた高良倉吉琉球大学名誉教授の解説をいただきながら正殿正面、琉球王朝の玉座、御差床(うさすか)の美しさに息をのみ、漆塗りの柱の精巧な彫刻に目を奪われた。そのときのDVDの映像に高良さんの声がかぶる。

 「失われた命は帰って来ない。でも文化遺産は努力で取り戻せる。首里城の復元は、そんな思いの沖縄の人々の心の復元でもあったのです」「あの戦争も、その後の苦難も、沖縄の人々は生来のこうした柔らかい心で乗り越えてきたのです」

 全国の人々が胸張り裂ける思いで見た首里城の崩落。その後、復元を願う寄付は予想外の速さで集まっているという。だが大きな障害も立ちはだかっている。資材と人材だ。復元の際、正殿だけでも直径1㍍級の台湾ヒノキ100本が必要だったが、いまは入手困難になっている。そして22万枚もの沖縄赤瓦、それに沖縄漆。いずれも調達が難しい。それより何より、瓦も漆も扱える職人が激減している。

 そんな折、三重テレビの仕事で2年前の台風被害で休館していた伊勢神宮式年遷宮の資料を展示した「せんぐう館」が再オープンしたというニュースにふれた。1000年もの間、20年ごとに神宮をすべて建て替えてきた遷宮。だが、そのために100年先を見据えたヒノキの宮域林があり、20年に1度のこととなれば、職人の技は確実に継承される。まさに先人の知恵ではないか。もちろん火災はあってはならない。だが台風もあれば、地震もある。こうした知恵に学ぶことはないのか 。

 月末、再び首里を訪ね、焼け残った城の大龍柱の制作者、西村貞雄琉球大名誉教授にお目にかかる。ぜひ先生のご意見も聞いてみようと思っている。

(2019年11月19日掲載)

 

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