日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
公共放送NHKが根本から腐っていた
-罪深い現場関与-
京都アニメーションへの放火殺人事件で被害に遭われた方の実名匿名報道が問題になっていたとき、私は「問われているのはメディアへの信頼性だ」と書いたり、コメントしてきた。そのメディアの一翼を担うNHKが根本から腐っていた。
日本郵政グループのかんぽ生命が主にお年寄り相手に保険料を二重払いさせたり、契約の際、家族を同席させるなと強要。特殊詐欺まがいの営業を展開していた問題は、じつは明るみに出る1年以上前の昨年4月、NHKの「クローズアップ現代+(プラス)」が「郵便局が保険を“押し売り”!?~郵便局員たちの告白~」として放送していた。
番組は視聴者から広く情報提供を求める“オープン・ジャーナリズム”によって制作。続編も放送すると予告していた。ところがこの流れを知った日本郵政グループがNHKの経営委員会に激しく抗議。これを受けて経営委員会は上田良一NHK会長を「厳重注意」とし、もちろん続編が放送されることはなかった。
わかりやすく言うと、経営全般を仕切る取締役が番組制作の責任者を叱り飛ばした形。これで現場が萎縮しないわけがない。NHKをめぐっては、これまでも与党などから圧力があったことは報じられている。だが今回は警察、検察も関心を寄せているかんぽ生命の組織ぐるみの不正事件。番組にストップがかかってから1年余り。この間に、どれほど新たな被害者が出たことか。
言うまでもなく、NHKは法律で国民から強制的に受信料を徴収することが認められた公共放送。その公共放送が、きょうもあしたも、お年寄りたちに被害が出ていることを知りながら警告を発する番組の放送をストップしていた。
片棒をかついだとまでは言わないが、これほど罪深い現場関与があっただろうか。
許せないのは、総務省からの天下りで郵政グループNO.2の副社長から「NHKはまるでやくざだ」とののしられながら、トップの会長も番組の続編を止めた経営委員会の委員も、いまだに視聴者に対して直接、なんの説明もしていないことだ。
取るべき道はただ1つ。12人の経営委員全員と会長にカメラとマイクを向けて、「クローズアップ現代+」でノーカットで放送しろ。そのときまで私たちに受信料不払いの権利はあると思うのだ。
(2019年10月8日掲載)
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