日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
暴力教師なぜ告訴、告発しない
-第三者委設置で司法踏み込みづらく-
もう20年以上前の事件だが、神戸市須磨区で起きた連続児童殺傷事件。犯行に及んだ少年Aがいた中学の卒業生は、何年たっても「中学はどこ?」と聞かれるたびにドキッとしたという。同じ須磨区の東須磨小の子どもたちもこの先、何十年と同じ思いをするのかと思うと胸が痛む。
40代の女ボス教師を中心にした暴力教師集団。20代の男女教師に、激辛カレーを食べさせる、車をボコボコにする、あざができるほど尻をたたく、性的行為を強要する。それがどういうことか、高学年の児童ならもうわかるはずだ。だけどいま、私の爆発しそうな怒りの矛先は事件に関わっている学校や市教委に向いている。
先週行われた保護者説明会で学校側は「(加害教師たちは)自宅で療養させている」「暴行の現場になった家庭科室を改装する」「当面給食にカレーは出さない」…。一体、どんな神経を持っていたら、こんなことが言えるのか。
理解に苦しむのは神戸市と市教委も同じだ。市はハラスメントなどに詳しい弁護士3人からなる第三者委員会を設置、年内に調査結果を出すとしている。委員の弁護士のこの先のご苦労はいかばかりかと思う半面、疑問も残る。記者会見した委員は「教師たちからヒアリングを進め、背景や風土も確認したい」としているが、果たして、すさまじい暴力や性的強要、これらはヒアリングして風土を確認するものなのか。
そもそも神戸市と市教委はなぜ、暴力教師を神戸地検か兵庫県警に刑事告訴、告発しないのか。20代男性教師がすでに被害届を出しているとするなら、それは違う。「家のお金がなくなりました」が被害届。「家のお金を○○が盗んだ。罰して下さい」というのが告訴、告発。これほど違うのだ。
暴力教師集団は傷害、暴行、脅迫、強要、強制わいせつ教唆、器物損壊、子どもたちの前で教壇に立つ先生がこれだけの犯罪にかかわっていたのだ。だけど、第三者委員会ができてしまうと司法は踏み込みづらい。それでいいのか。
いま、私たちにできることは、この学校の子どもたちが将来、「東須磨小の卒業です。あの事件の教師はみんな裁きを受け、罪を償いました」と、きちんと言えるようにしておくこと。それしかないのではないか。
(2019年10月22日掲載)
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