日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
公務員の職務怠慢を罪に問えないか
-虐待事件の言い訳もう聞きたくない-
少し前のこのコラムに、公務員が事件を起こそうと、とんでもない間違いをおかそうと、本人は名前も顔も隠してもらい、上司がしおらしく頭を下げて終わり。こんなことをしていたら私たちの社会はおかしくなると書いた。2件の児童虐待死事件を前にして、いままたその思いを強くしている。
鹿児島県出水市で4歳の璃愛来(りあら)ちゃんが虐待死、母親の交際相手の男(21)が逮捕された。あざだらけで死亡した瑠愛来ちゃんは今年初め、それまで住んでいた薩摩川内市で4回、夜に戸外で1人でいたところを警察が保護。これを受けて警察は児童相談所に2度、女児の一時保護を要請したが、児相が保護することはなかった。
また、母子が7月に薩摩川内市から出水市に転居した際、出水市は薩摩川内市から母親の育児放棄の引き継ぎを受けていながら、対応を協議する対策会議を開いていなかった。それどころか母親が妊娠しているのに、逮捕された男の存在は、両市とも「知らなかった」。
一方、東京地裁では昨年3月、大学ノートに「もうゆるして おねがいします」と書いて亡くなった結愛(ゆあ)ちゃん(当時5)の事件で、父親とともに児童虐待で起訴された母親(27)の裁判が続く。
この事件では、両親と結愛ちゃんは事件の約1カ月前に香川県から東京・目黒に転居。だが、虐待の事実を把握していた香川県の児相は、虐待を裏付ける資料を管轄の品川児相に送付していなかった。
このため、転居から半月以上たって品川児相がやっと家庭を訪問。しかし母親は職員に「子どもはいない」と答え、児相はそのまま引き揚げている。この間、結愛ちゃんは朝4時に起こされて「ゆるして ゆるして」などとノートに記していた─。
怒りとやるせなさで、胸が張り裂けそうだ。
子どもの保護にも法律の壁がある、人手不足で1人の職員が100件も案件を抱えている、親と引き離すことが果たして適切か…。
もういい。聞きたくもない。そんな言い訳、何万回聞いたことか。こんなことを言っている間に、何十人の子どもが命を落としたことか。極論であることも、批判も承知であえて書く。公務員の職務怠慢、職務不履行、職務不誠実を罪に問う法律はできないものか。
(2019年9月10日掲載)
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