日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
温かみも思いやりもない増税の法律&規則
-消費増税と複雑な軽減税率の話-
出演している大阪・ABCテレビの「キャスト」に「お絵描きニュース」というコーナーがある。女性アナウンサーが、かわいいイラストをつけて時の話題を解説する。先週のテーマは10月1日、8%から10%に上がる消費増税だった。
中でも最近人気なのが、外食でもない、内食でもない、中食(なかしょく)だそうだ。レストランなどの店内で食事をするのは、食品軽減税率の対象にならない外食扱いで10月から消費税は10%。これに対してピザやハンバーグといったものを持ち帰る内食は軽減税率が適用され、8%のまま。
一方、レストランなどで調理途中の食品を買って家で少し手を加える。これが中食で、税率は内食と一緒で8%。女性アナは「パーティーなど出先でコックさんが調理してくれるケータリングも中食の扱いですから、お得かもしれませんね」とコーナーを締めくくった。
ところが数分後、担当者があわててスタジオに「ケータリングは外食扱い。税率は10%」というペーパーを入れてきた。咄嗟に私は「国税の税解釈は複雑。訂正放送は少し待った方が」と止めたのだが、10%課税のケースがある以上ということで、おわびとともに訂正した。
納得できない私がさっそく国税庁などのガイドブックを調べてみると、やっぱりなあー。
▼自店舗でないところで食事を出すのは「食事の提供」で外食。家で食べてもらうのは「飲食料品の提供」で内食。出張料理のケータリングは食事の提供とみなされ、外食扱いの10%となる
▼取り分けや盛りつけは食事の提供とみなされ、外食扱い。ただしみそ汁をおわんに入れたまま配達するとこぼれるので、出先でポットから分けるのは食事の提供にならず、軽減税率の対象
▼会社にコーヒーの出前を取る場合、社外の喫茶店なら内食扱いで軽減税率。ただし社内のテナントから取ると、お持ち帰りにはならず外食の10%
▼老人ホームの食事は原則内食の軽減税率。ただし「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に登録すること。1食につき640円以下、1日の累計が1920円以下であること─
このあたりまで読んで、私は完全にキレましたね。こんなわけのわからない法律に規則。役人の小理屈、屁理屈。温かみも思いやりもない、いやーな社会という気がしてならないのだ。
(2019年9月24日掲載)
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