日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
政治家は俺の辺野古の海を埋め立てる
-沖縄知事が歌に込めた思い-
♪Businessmen,they drink my wine ~ Statesmen landfill my Henoko shore
─ビジネスマンは勝手に俺のワインを飲んじまって~政治家は俺の辺野古の海を埋め立てる。
「7月のフジロックフェスティバルで熱唱されたそうですが、そのさわりだけでもお願いできないでしょうか」。東海テレビスタッフのむちゃ振りリクエストに、トントンとリズムをとった玉城デニー沖縄県知事は、張りのある歌声でボブ・ディランの曲に乗せてワンフレーズを披露してくれた。
これまで何人も知事をインタビューしたが、こんな陽気なおじさんは初めてだ。
「沖縄を飛び出して全国をまわろう」。知事の発案で始まったトークキャラバン。名古屋公演の前にインタビューさせていただいた。
「わかっている人だけわかっていたらいいという問題ではないのです。沖縄で起きていることは、いつ本土で起きてもおかしくない。もし本土の大都市近辺に米軍機が落ちたとしても日本は手も足も出せない。それは沖縄と一緒なのです」
だけど日本政府はその米軍の意に沿って、辺野古の埋め立てを強行する。
「沖縄の民意に沿うと言いながら辺野古を撤回する意思はなく、ならばと実施された県民投票で72%が埋め立て反対とわかっても直後に埋め立てを再開する。それがいまの政権なのです」
玉城知事は、決して日本中から基地をなくせと言っているわけではない。沖縄にばかり集中している基地の負担、それをなんとかしようと訴えているのだ。
「これは沖縄と日本政府、日本政府と米軍がしっかり話し合えば、いくらでも道筋が見えてくるはずです。だから、私は対立ではない、対話をしましょうと呼びかけているんです」
だが、玉城知事が対話の期間を設けようと官邸を訪ねた日、政府は辺野古の海に大量の土砂を投入した。
どんな理不尽も力で押し切れば思いのまま。どんな不条理も相手を泣かせてしまえば、こっちのもの。沖縄で起きている理不尽や不条理は、いま本土に、いや全国に広がりつつあるのではないか。だけど、きょうも政治家は、Landfill Henoko ─辺野古を埋め立てる。
(2019年8月27日掲載)
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