日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
公務員も裁判官も「顔も名前も」ひた隠し
-不正、誤認逮捕の後始末-
戦後74年の夏、当たり前のことだが、来年は75年。人の年齢でいえば後期高齢者となる。だけど日々ニュースを送りながら、この国は限りなく幼児化、お子ちゃま化している気がする。
夕方の東海テレビのニュース。この日、名古屋市の職員2人と愛知県の職員1人の不祥事を伝えた。名古屋市の42歳の職員の男は、コンビニでマンガ2冊(950円相当)を万引して停職4カ月。また34歳の職員は「女性問題で悩んで」10日間無断欠勤して減給処分。23歳の県職員の男は焼酎のお茶割り10杯を飲んで車を運転、県は懲戒処分にするという。
記者会見に出てきた女性を含む市や県の幹部。深々と頭を下げてみせたものの、やってられない感がありあり。それはそうだ。23歳、34歳、42歳の大の大人は、だれ1人、顔も出さなければ名前もなし。幹部が何分頭を下げようが、どこ吹く風だ。
名古屋からの帰り、翌週ラジオで取り上げるニュースをメールでチェックすると「女子大生誤認逮捕。松山地裁謝罪せず」があった。タクシー内で運転手のバッグを盗んだとして無実の女子大生が逮捕された事件で、警察が請求するまま逮捕状を出した裁判官について、地裁は裁判官の名前の公表も謝罪も拒否した。
この事件では誤認逮捕された女子大生が「手錠をかけられたときのショックは忘れられない」「就職が決まっているのに大変な事になるぞ、と脅された」とする手記を発表、取り調べ刑事の直接の謝罪を求めたが、県警本部長は「前例がない」と拒否。女子大生を2カ月にわたって責め続けた大の大人は、ここでも顔も名前も隠したままだ。
まだある。香川県警では40代の警部補が、未成年の息子が交際相手の女性に乱暴、スマホを奪った事件で、息子が持っていたスマホを隠したうえ、女性に被害届を出さないように強要したという。だが県警は警部補の顔や名前どころか、事件そのものをひた隠しに隠していた。
何をやっても責任をとることなく甘ったれたまま幼児化した大の大人。片やあの時代、軍の暴走を止めるどころか戦局をあおり立て、戦後は責任をとることもなく何食わぬ顔で社会に潜り込む。74年前のあのころの恥知らずな人たちと、どこか似てきてはいないだろうか。
(2019年8月20日掲載)
| 固定リンク
「日刊スポーツ「フラッシュアップ」」カテゴリの記事
- 風化に抗い続ける未解決事件被害者家族(2024.11.27)
- 社会性 先見性のカケラもない判決(2024.11.13)
- 「なりふり構わぬ捏造」どれだけあるんだ(2024.10.30)
- 追い続けた寅さんに重なって見える(2024.10.16)
- どうか現実の世界に戻ってほしい(2024.10.02)