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2019年8月 1日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

私たちの社会はいつ負の連鎖を断ち切るのか
-やりきれない「京アニ放火殺人事件」-

 京都の祇園祭が終わり、大阪の天神祭本宮の25日夜、いつも京都でお世話になっている個人タクシーの運転手さんから「京都アニメーション本社近くのホールで、亡くなられた方のお通夜が営まれるようです」とメールをいただいた。折り返し電話を入れると「ご遺族でしょう。憔悴しきった姿がありました」と、沈んだ声が返ってきた。

 これまでに、京都府警は犠牲者35人を確認。亡くなられたのは女性21人、男性14人で、半数以上の方が20代か30代だったとしている。これと同時に、府警は100人の特別捜査本部員のうち80人をご遺族支援にまわし、さらに100人の警察官を心のケアなどのサポートに当たらせる異例の体制を組んだ。

 ほとんどの遺体は損傷が激しく、DNA鑑定でやっと身元を特定。それでも捜査員の問いかけに大多数のご遺族は、どうしても最期の対面を望む。そうした遺族の直後の心のケアに当たるのも、いまは捜査員の大事な仕事になっている。

 さらに、いまなお意識が戻らないまま生死をさまよう十数人の方々。捜査幹部は、あまりにひどいやけどの状態に時折、声を詰まらせながらも「絶対に生き抜いてくれよ」と懸命に闘う命に思いを寄せている。

 一方、殺人と放火容疑で逮捕状が出ている青葉真司容疑者(41)は、ドクターヘリで京都から大阪狭山市の大学病院に移送されたが重篤な状態が続いている。やけど面積を減らすために皮膚移植が検討されているが、手術に耐えられる容体に至らず、意識は戻ったものの生死の間をさまよっている。

 捜査幹部は「前後の足どりから正常な心理状態だったことは明らか。なんとしてでも本人の口から動機を語らせたい」としているが、依然として予断を許さない状況だ。

 それにしても7月25日といえば、夏祭りの夜、カレーを食べた小学生を含む4人が犠牲になった和歌山毒物カレー事件から21年。さらに翌26日は、障がい者19人の命が奪われた神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」殺人事件から3年であった。

 私たちの社会は、いつになったら、この負の連鎖を断ち切れるのだろうか。

 つらく、悲しく、やりきれない、2019年夏である。

(2019年7月30日掲載)

 

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