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2019年5月 9日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」大谷昭宏

令和の坂道どうあるいていくか
‐新時代 心に残った新聞報道‐ 

 平成最後の4月30日は、岐阜県関市平成(へなり)地区の「道の駅平成」から雨模様のなかの生中継。明けて令和となった5月1日は、定番のこの日式を挙げたカップルに、これも定番、日付が変わると同時に産声をあげた赤ちゃんの紹介。テレビでこんな放送をしておいて「過剰お祝い 議論遠く」(2日付毎日新聞)の指摘に耳を傾けよう、なんて言うのもおこがましい。それを承知でこの間、心に残った新聞論調をいくつか。

 平成最後の日を目前に毎日新聞の「余録」は、まず江戸時代の終わりから伸び続けてきた人口が平成20年(2008年)、1億2808万人をピークに下り坂に入ったことを指摘。平成12年(2000年)、世界で2番目だった国民1人当たりのGDPは、いま世界で26番目にまで落ち、「知らず知らずのうちに私たちは文明の峠を越えたようである」として、司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」のあとがきの一文にふれる。

 〈楽天家たちは…前をのみ見つめながらあるく。のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶(いちだ)の白い雲がかがやいているとすれば、それのみを見つめて坂をのぼっていくであろう〉

 このあとがきに続けて、余録は「今、峠の坂道を越えて先行きに戸惑う私たちだ」として「誰もが文明の引き潮におののいた平成だった」と記すのだった。

 もう1点。元号が変わり、新天皇が即位された日の朝日新聞朝刊。原武史放送大学教授は〈社会は「奉祝」一色になっている。天皇が戦争責任を清算せずに死去したことなど、批判的な意見がテレビでも平然と放送されていた昭和の終わりに比べると、日本人の皇室感は大きく変わった〉としてこう続ける。 

 〈(いまは上皇、上皇后となられたおふたりは)おおむね称賛をもって迎えられた。ますます分断する社会を統合しようとしてきた感さえある〉としながらも、極めて厳しい指摘をする。

 〈だが一方で、本来政治が果たすべきその役割が、もはや天皇と皇后にしか期待できなくなっているようにも見える。そうであれば、ある意味では、民主主義にとっては極めて危うい状況なのではないか―〉

 連休も終わって、きょうからの日常。かがやく雲のみを見つめてきた私たちは、令和の坂道を、どうあるいていこうとしているのだろうか。

(2019年5月7日掲載)

 

 

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