日刊スポーツ「フラッシュアップ」大谷昭宏
バレないサボり方を後輩に伝授
‐施行の働き方改革関連法
春4月、街にはちょっとぎこちない新入社員のスーツ姿が目立つ。そしてテレビやラジオはリニューアルの季節。少し模様変えしたABCテレビ(大阪)の夕方の番組、「キャスト」の出演を終えて車に乗ると、カーラジオはNHKの定時ニュースに続いて「ニュースにプラス」。この日のテーマは、4月1日施行の働き方改革関連法だった。
ズバリ、「残業は減らせるか」というキャスターの問いに、解説委員は「減らせます。今回は違反企業に刑事罰が科されるんです」。たしかに月に100時間といった過酷な残業に、あとを絶たない過労死。関連法では、まず大企業から違反に刑事罰が科せられる。
その流れに私は、おつき合いの深い民放のテレビ、ラジオ局の管理職が額にしわを寄せている光景を思い浮かべた。視聴率を上げろ。事件は落とすな。その一方でノー残業、夜討ち朝駆けもほどほどに。「一体どうせいちゅうんや」という舌打ちを何度聞いたことか。
そんなとき、私は「それなら働き方より、さぼり方を伝授したらどうなの」と、半ばあきれられながら、結構本気でアドバイスしている。新聞社の、特に社会部だったら、どの社だろうと先輩方のさぼりの武勇伝にはこと欠かないはずだ。
まっ昼間の映画館。上映が終わって照明がつくと、社会部のあの顔、この顔。おっとまずいぞ、あれはデスクじゃないか。
ポケットベルの時代。そのポケベルは地下に電波が届かない。「オイ、何してるんや」「ハイ、地下街の喫茶○○で所轄署の係長とずっとお茶してまして」。
このあたりは、まだまだカワイイ。二日酔いで日が高くなるまで朝寝を決め込んでいると、ポケベルの音。跳び起きて折り返すとデスクの怒鳴り声が響く。「やっとつかまった。で、お前いまどこや?」「ハイ、K署の刑事課長と朝からすっかり話し込んでましてね」「な、なんやと。それでお前、熱うないんか」「ハア? この真冬に暑いって言われても」「アホ、いまそのK署が燃えとって大騒ぎになっとるんじゃ」
入社式に続いて、配属部署の歓迎飲み会。諸先輩から仕事について学ぶのもよし。だけど忘れずにバレないさぼり方も伝授賜る。それが花に浮かれた私が諸君に贈る働き方改革なのです。
(2019年4月9日掲載)
| 固定リンク
「日刊スポーツ「フラッシュアップ」」カテゴリの記事
- 風化に抗い続ける未解決事件被害者家族(2024.11.27)
- 社会性 先見性のカケラもない判決(2024.11.13)
- 「なりふり構わぬ捏造」どれだけあるんだ(2024.10.30)
- 追い続けた寅さんに重なって見える(2024.10.16)
- どうか現実の世界に戻ってほしい(2024.10.02)