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2019年4月18日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」大谷昭宏

紙幣刷新5年前の発表…魂胆見え見え
‐手詰まりアベノミクス苦肉の策‐

 新聞、テレビが大騒ぎするのは、まあ仕方がないとして、週刊誌は早速「何の意味があるのでしょうか」と聞いてきた。毎日新聞や日経がいち早く報じ、朝日、読売が後れをとった1万円札などの紙幣刷新。私は「いよいよ手詰まりのアベノミクス。政権は禁じ手とまでは言わないが、こんな苦肉の景気対策を出してきた」と、あちこちでコメントさせてもらった。

 1万円は渋沢栄一、5000円は津田梅子、1000円は北里柴三郎に、それぞれお札の肖像画を一新する通貨刷新。ただし発行するのは5年先、2024年だとしている。20年ぶりのこの刷新。だけど前回は発行の2年前、前々回は3年前の公表だったのに、今回はなんと5年も前の発表。なぜなのか。魂胆が見え見えではないか。

 目の前の衆院補選、7月には参院選。なのに景気も物価も一向に上向く気配はない。そこに10月の消費税アップが冷水をぶっかける。さらに来年7月の東京五輪のあと景気はどっと落ち込み、安倍政権終焉のころ、景気は鍋底を這っている危険性もある。それはまずい。けど特効薬はない。ならば、紙幣刷新でちょっと目先を変えてみようというのだ。

 もう1点、政府は後を絶たない通貨偽造、偽札対策のホログラムを強化するという。だけど偽札の件で偽情報を流してはダメだ。通貨偽造は国を揺るがす重大犯罪なので最高刑は裁判員裁判の対象となる無期懲役。

 だが裁判員制度が始まって今年で10年。調べてみると2年前、大阪・西成の自宅で1万円札を両面コピーしたオヤジが知人にこの偽札で缶チューハイ2本を買わせた事件が1件、たしかに裁判員裁判になっていたが、判決は無期どころか執行猶予。どこが後を絶たない通貨偽造なんだ。うそばかりつくんじゃない。

 それに、福沢さんから渋沢さん、一葉さんから梅子さん、野口さんから北里さん。だけど、長い間、顔を合わせていたせいか、なんとなくこのままの方がいいなあという気がしてならないのは私だけだろうか。もしみんながそう思って、いまのお札を大事にしたら、景気浮揚には逆効果だ。

 墜落寸前のアベノミクスをなんとかしたいという気持ちはわからなくはない。だけど古来、日本に「刷新」という言葉はあっても「札新」なんてものはないのだ。

(2019年4月16日掲載)

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