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2019年3月21日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」大谷昭宏

政策も理念もはるかかなたに吹っ飛ぶ
‐大阪クロス選挙‐
 あってほしくないことだが、私たちの仕事がにわかに忙しくなるのは、事件、事故、そして災害のときだ。ただ、ここ1カ月ほどはいささか違う。私だけでなく、自治体や地方政治に詳しい同じ事務所の吉富有治記者も新聞、テレビ、ラジオの取材依頼、インタビューと大忙しだ。
 もちろん話題は、大阪府知事と大阪市長が入れ替わって立候補するクロス選挙。来月の統一地方選に合わせたこの奇策の裏に、4年前に否決された大阪都構想があることは全国の人もわかっている。だけど「都構想ってとっくの昔にケリがついたんじゃなかったの?」と、みなさん、疑問符だらけ。もちろん大阪の人だって私の知る限り、大半が「いいかげんにせえや」だ。
 そもそもクロス選挙になったのは、松井一郎知事と吉村洋文市長の大阪維新の会と公明党の大げんかがきっかけ。2015年、大阪都構想をめぐる住民投票で敗れた維新は「負けは負け」と言っていたのに、僅差だったこともあって未練タラタラ。結果、公明と再度、住民投票に持ち込む密約まがいの合意文書を作成した。
 ところが、その実施時期をめぐって今年4月の統一地方選と主張する維新の松井・吉村組に対して公明は、地方選と夏の参院選、そこに住民投票ときては支持母体がもたない。「実施は秋の約束だった」と譲らず、ついに維新側は「内緒の合意をバラすぞ」と、どう喝まじりの立ち回り。結果、知事、市長が入れ替わることで互いに任期がこの先4年となるクロス選挙で「信を問う」ことにしたという。
 あきれるばかりの選挙に、私は大阪の毎日新聞から「今度の選挙を“大阪○○選”と命名すると─」と依頼されて“どの面下げて選挙”と名づけさせてもらった。政策も理念も、はるかかなたに吹っ飛んだこの選挙。今年は統一地方選に、参議院選、衆議院補選と並ぶ亥年選挙の年。のっけからこんな低次元の選挙にはつきあってられないといった空気になることが怖い。
 それにしても維新は大阪で公明と大げんかしたうえ、自民とも来る選挙で全面対決。なのに中央政界に目を移せば、維新も公明も、ともに安倍自民を支える密約ならぬベタベタの蜜月関係。この3者、もし打ちそろって大阪に来ることがあったら、果たして“どの面下げて”来はるんやろか。
(2019年3月19日掲載)

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