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2019年2月21日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

池江さん 待っているからね
‐励まされた言葉‐

  池江璃花子選手の白血病公表で思わぬ波紋が広がっている。桜田義孝五輪相の「がっかり」発言では、この日刊スポーツからもコメントを求められた。私自身、がん手術を経験していることから、池江さんの件ではテレビなどで思いを聞かれることも多い。

  桜田大臣の言葉は、4分余りの全体を聞くと、激しく人を傷つけていると思えない。だけど、たびたびの不規則発言、それに五輪憲章も読んでいない担当大臣を政権は意固地になって更迭もしない。それがこんな騒動を引き起こしているのだ。これから病と闘う池江さんに、そんな姿を見せてどうするんだ。

  じつはこうした流れは、がんと闘う人と、まわりとの間にぎこちない影を落としているように思えてならないのだ。私自身が気にしていないのに、がんのことを口にして急いでとり繕う人。傷つけまいと、がんの話題を避けようとする人。かえって気まずくなったことも多い。

  池江さんの件では先週、朝日新聞が2面トップで「がんとの闘い どう接すれば」の記事を掲載。「応援が励みに」という闘病経験のある選手の言葉を載せる一方、「応援は患者の思いを聞いて」という専門家の声も紹介している。

  なんだかなあ。国民の2人にひとりが、がん患者といわれる時代に、もっと肩の力を抜くことはできないものか。

  ひるがえって私も、かなり難しいがんと宣告されたとき、まわりの方々がさまざまな声を寄せてくださった。もちろん傷つくことを言われた覚えはないが、「がんばって」「負けないで」「いまは医学が日進月歩だから」…。そのとき一番心に強く残った言葉は、いま思い起こしてみると単純に「待っているからね」だった気がする。

  「早く良くなって。待っているからね」「あせらずに。待っているからね」「気長にのんびり。待っているからね」。変幻自在、いかようにもとれるこの温かい言葉に、どれほど励まされたことか。

  池江さんは、「今の率直な気持ち」と題して、たくさんの励ましのメッセージに感謝を込めて更新したツイッターの最後をこう締めくくっている。

  「必ず戻ってきます。池江璃花子」
 
  ─そう、待っているからね。


(2019年2月19日掲載)

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