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2019年1月17日 (木)

日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏

デタラメばかりの国のデータを質せ
‐19年 念頭に思うメディアの役割‐

  つくづく私たちは3等国家か4等国家で暮らしているのだということを思い知らされる。厚労省が従業員500人以上の全ての企業を対象に調査、失業や育児、介護などの給付金の支給額の指針としている「毎月勤労統計」が、実際には東京では3分の1ほどの企業しか対象になっていなかったことが発覚した。

  このため雇用保険などで本来の支給額より低い金額を受け取っていた人は延べ1973万人、金額は雇用保険で1人平均1400円になるという。あわてた国はその分を追加給付するとしているが、一体どうやって2000万人近い人にこの金を返すのか。手間を考えただけで気が遠くなる。結局は大半の人が泣き寝入りした消えた年金と同じことになるのではないか。

  思い起こせば、裁量労働制の実際の労働時間。外国人技能実習生の失踪理由。データはどれもうそ、デタラメ、インチキ、ごまかし。そんなとき、ふっと救われる毎日新聞の記事に出会って、今年最初の文化放送の番組、「くにまるジャパン極」で紹介させもらった。

  〈就学不明 外国籍1・6万人。100自治体〉の見出し。記事によると、全国100の自治体にアンケートしたところ、日本に住民登録し、小中学校の就学年齢にある外国籍の子どもの約2割、1万6000人が学校に通っているか確認できない「就学不明」になっているという。だが外国籍の子どもは義務教育の対象外なので、自治体の多くはそれらの子どもの状況を把握していないという。 記事を読んで昨年秋、外国人労働者が数多く暮らす群馬の中学校教師の言葉を思い出した。「3者面談といっても働いているお母さん、それに通訳さんの都合をつけていると、子どもをまじえて夜の8時9時の面談になることもあります。そのうち親も子も学校から遠ざかってしまって…」。

  こんな状況なのに、国は今年4月からいきなり34万5000人の外国人労働者を受け入れるという。果たして今度はこの外国人の実態に、どんな調査結果を出してくることやら。

  国が、役所が、こうだからこそ、毎日新聞のような地味だけど地道な調査報道がいぶし銀のように光って見える。メディアの役割をあらためて思い知らされる2019、年の初めである。

(2019年1月15日掲載)

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