日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
海外からの注目と批判 検察は自覚持て
‐ゴーン容疑者逮捕 隠される情報‐
逮捕から半月たつが、出演しているテレビ番組から日産自動車前会長、ゴーン容疑者(64)が消えることはない。
ただ、ここにきて気になることがある。世界が見ている日本の司法の動きとしては1976年、ロッキード事件の田中角栄元総理の逮捕、いやそれ以上の注目度といっていいのに、どうも検察当局にその自覚がないように思えるのだ。
先週あたりからゴーン容疑者と関わりの深いブラジルやレバノンだけでなく、欧米諸国からも日本の検察捜査に対する批判が噴出している。最長20日の勾留、狭小な独居房での拘束。欧米韓国では当然なのに、弁護士立ち会いを認めない取り調べ。保釈を認めず、ときには100日を超える起訴後の勾留、いわゆる人質司法。
だが、こうした批判に対して検察は相変わらず、情報が外に出ることを極端に嫌う保秘。いつも頭にあるのは、とにかく有罪に持ち込むまでの公判の維持。そんなベールに包まれた捜査に、フランス政府などから国家権力と日産がタッグを組んだルノー外しではないかとうたぐる声も出始めている。
さすがの検察もこの事態に、東京地検次席検事の定例記者会見には海外メディアも同席させ、裁判所の令状に基づいて身柄を拘束、取調べには通訳をつけ、全過程を録画録音しているとしたうえで「各国の司法には、それぞれの歴史と文化があり、批判は当たらない」と強調した。だが、この会見もいつも通り、マイク、カメラなしのペン取材のみ。さっそく各国の記者からは、いまどき音も映像もとらせない文化ってなんだという声が出たという。
思えば 事件の端緒は米上院議会だったとはいえ、嘱託尋問、コーチャン証言、ワンピーナツ100万円といった捜査情報がアメリカの司法当局からポンポン飛び出したあのロッキード事件とは段違いだ。欧米に限らず、いまではアジア各国も司法に報道官、広報官を置いて、カメラの前で身ぶり手ぶりで、いま何を調べ、何を暴こうとしているのか、メディアを通じて国民に知らせるのが常道だ。
もちろん、それぞれの国の司法に、それぞれの歴史と文化があることはわかる。だが、隠されたもの、見せようとしないものに、人々が不信と不審を募らせる。それもまた古今東西変わらぬ歴史と文化だと思うのだ。
(2018年12月5日掲載)
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