日刊スポーツ「フラッシュアップ」 大谷昭宏
トランプ大統領への「なんでやねん」
‐米下院の女性議員 過去最多100人近くに‐
ABCテレビ(大阪)の夕方番組、「キャスト」に「なんでやねん」というコーナーがある。「始球式でバッターが必ず空振りするのは、なんでやねん」「ラーメンにメンマが入っているのは、なんでやねん」…。まっ、ドーデモいいことをああだ、こうだ。なかなかの人気コーナーなのだが、1度、共演者のココリコの遠藤章造さんと一緒に「世界中が“なんでやねん”のときに、きょうもドーデモいいことで“なんでやねん”では笑われるでぇ」と叫んだことがあった。
忘れもしない2016年11月9日(日本時間10日)、あのトランプ氏が、まさかまさかの第45代アメリカ大統領に。そんなトランプ政権もあれから2年。折り返し点の中間選挙がやってきた。その選挙を前にマイケル・ムーア監督の映画「華氏119」を見てきた。
ロシア疑惑に、女性スキャンダル。移民は「ギャング集団」で、メディアは「国民の敵」。ハイスクールで銃乱射が起きれば、「教師に銃を持たせろ!」。だがムーア監督は返す刀で、腰の引けたオバマ前大統領や上から目線のヒラリー前大統領候補も切って捨てる。
そんななか映画に登場するのは、利権がらみで鉛入りの水道水を住民に飲ませる州知事を追い詰める母親たちと州の女性職員。自分たちも薄給なのに、貧困層の子どものために立ち上がる先生方。何より亡くなった級友の名前をひとりずつ挙げて、涙をぬぐおうともせずに銃規制を訴える女子高生。そんな若者たちは、「まずは選挙に行くことから始めよう」と訴える。
そして迎えた11・9ならぬ11・6の中間選挙。18歳から29歳の若者の投票率は21%から31%にまで伸びた。下院の女性議員は過去最多の100人近く。最年少の女性は29歳。ムスリム(イスラム教徒)の女性議員も誕生した。アメリカの先住民族の子孫も、いまはトランプ氏によって入国を禁じられているソマリア難民の娘も、レズビアンを告白した女性も、みんなみんな下院議員だ。 もちろん今回の選挙は大統領への中間テスト。それが終わって人々の視線は次の大統領選挙へ。米国民でなくても興味は尽きない。
2020、なんでやねんと天を仰ぐのは、またまた若者であり、女性であり、マイノリティーか。はたまたトランプ氏、その人か─。
(2018年11月13日掲載)
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