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2018年10月 5日 (金)

Webコラム 吉富有治

大型台風が連発する今年の日本 一貫性のない松井知事の対応に議会も苦言

  今年の日本は、まるで台風に好かれているかのようだ。1961年に襲来した「第二室戸台風」に匹敵する台風21号は9月4日、非常強い勢力を保ったまま日本に上陸し、13人の尊い命を奪い去った。台風21号の勢力に劣らぬ24号は9月30日に和歌山県田辺市付近に上陸し、そのまま列島を横断。関東地方では交通機関がマヒし、静岡では大規模な停電が発生。4人の犠牲者を出し、各地で床上浸水や停電などの被害も発生した。

  台風24号が上陸する前日の29日、大阪府の松井一郎知事はこれ見よがしに防災服を着込んで緊急の記者会見を開き、「24号も21号と同程度の強い勢力を保ったまま接近、上陸する恐れがある」と強調、「まずは自分の命や身体を守ることを第一に行動してもらいたい」と府民に警戒を呼びかけた。

  災害への備えと対策をいち早く住民に伝える姿勢は自治体トップとして至極当然であると思う。だが、台風24号より勢力が強い21号のときはどうだったのか。前回の緊急コラム「知事失格! 台風被害がまだ残る大阪を離れ沖縄県知事選に首を突っ込む松井知事」で書いたように、その行動は首をかしげたくなるものではなかったのか。このとき知事は台風の前日も当日も府民に向けて注意を呼びかけるメッセージは発しなかった。むろん防災服など着てはいない。それどころか、台風が大阪を襲った当日の午後6時半にはさっさと退庁していた。

  台風翌日の9月5日の時点で関西電力の管内では約218万3000軒が停電し、関西の空の玄関口である関西国際空港では高潮によって空港機能は完全にマヒ。空港内では6日未明まで職員と利用客の約8000人が取り残されていた。にもかかわらず松井知事は9月7日、日本維新の会代表として政務で県知事選のために沖縄入りし、9日には万博誘致運動のために、こちらは府知事の公務として欧州へと旅立った。松井知事は「24号も21号と同程度の強い勢力」という認識があるのなら、どうして21号と24号とで対応に差が出てくるのだろうか。

  筋も通っていなければ一貫性もない松井知事の対応について、自民党大阪府議団の杉本太平府議は10月2日の大阪府議会本会議で府の対応を批判した。

  杉本府議は、超大型の台風21号が大阪を襲うことは予報されていて事実そのとおりになったのに、なぜ大阪府は災害対策本部を立ち上げなかったのかと何度も質問。対して松井知事をはじめ府の危機管理室の幹部は、「地震と違って台風には災害対策本部を立ち上げる明確な基準はない」「適切に対応した」と繰り返すのみだった。

  明確な基準がないから災害対策本部を立ち上げなかったというのなら危機管理など不要である。危機管理の基本とは、最悪の事態を想定して最善の策を講じることだろう。たとえ「明確な基準」はなくても、万が一に備えて危機管理本部を立ち上げ府民の命と財産を守り、そのために備えることが行政の役割ではないのか。

  杉本府議は質疑の最後に、「知事は台風24号のときは前日に防災服を着て府民向けのアピールをした。まさか誰かから『ウソでもいいから防災対策に乗り出している姿を府民に見せてください』と釘を差されたわけではないと思うが、21号の対応がまずかったと知事みずから認めたということではないのか」「多くの死傷者が出ているにもかかわらず、9月7日には沖縄県知事選に応援に行った。府知事として優先すべき公務はなかったのか。府民、被災者の気持ちに寄り添うことが本来の府知事として本来のあり方ではないのか」と府と知事の対応を厳しく批判したが、松井知事には蛙のツラに小便だったようである。

  台風21号で大阪を留守にした松井知事について「ありえない」と驚く府議や府職員は多く、ネットでも批判が集中した。それで慌てたのか、「災害対応は基礎自治体の仕事。知事の役割は国との折衝などで、事実、松井知事は早々に政府関係者と面談して関空の早期回復が実現した」などと擁護する維新の議員がいたほどである。

  なるほど、この主張が正しいとしよう。だったら、なぜ松井知事は台風24号で同じ態度を取れなかったのだろうか。防災服を着て府民にメッセージなどを出さず早々に政府関係者と会い、ついでに沖縄へ飛べばいい。自ら推薦状を渡した佐喜真淳候補が破れたことについて日本維新の会の馬場伸幸幹事長に謝罪させず、自分の努力が足らなかったと支持者に頭を下げていれば、まだ一貫性はあっただろう。

  この週末には大型で非常強い台風25号が列島を襲おうとしている。台風の影響や被害も心配だが、まるで一貫性のない府知事がトップにいることのほうが、もっと不安である。

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